2015年12月26日土曜日

大成A案

「大成(建設のA)案でもう決まっているから。」業界では名の知れた知人の設計士が言った。それから程なくして新国立競技場のデザインがA案に決まったとの報道に触れた。この設計士はかねてから所謂入札案件も実は出来レースで、事前に誰が受注するかわかった上で他の企業が付き合いで参加すると言っていた。発注主が仕切る、形を変えた談合だ。付き合いで参加するのはもちろん自分の番が回ってくるからで、この設計士も自分の設計が選ばれないことがわかった上で協力するのだという。某公共放送を含むメディアが公正に審査されたかのような印象を与える報道を繰り返したことで、こうした裏事情はきれいに包み隠されたわけだが、敗れたB案の建築家が「さも最初からA案に決まっていたような印象を受けた」とインタビューで答えていたのには関係者もヒヤヒヤしたことだろう。くだんの設計士によると、一連のごたごたで世界の建築業界では日本はもはや一等国とは見なされなくなり、今回参加した建築家はザハ氏のデザインを選んだA藤何がし氏に比べて世界的な評価は高いものの、今回のデザインは予算を意識したことで大学院生でもできるレベルとのことだった。また、今回採用されている案でも言われている予算で収まることはまずありえないということだった。

2015年12月19日土曜日

社外取締役

生え抜きの人々による馴れ合い経営を防ぐとされる社外取締役制。テレビに登場する評論家も、それがあるべき姿との論調で語ることが多いが、以前食事をご一緒した自称‘独裁’経営者は「社外取締役など、全くもってナンセンス」と切り捨てた。「会社の事情やビジネスについてよくわかりもしない部外者が経営に口出ししても足を引っ張るだけ、スティーブン・ジョブズ氏がワンマンでなかったら今日のアップルはない」と述べた。過激にも聞こえるが、赤字会社を立て直し、年商数百億円の企業に育て上げた人物の発言なので説得力がある。私がかつて勤めていた会社はいち早く社外取締役を受け入れたが、知識も情報も時間も限られていて、なかなか有効な助言をするに至っていない印象があった。当時脚光を浴びていた自動車メーカーの外国人社長など、「経営目標を達成できなければ経営陣は辞任すべき」と威勢のいいことを言っていたが、自分の会社が目標未達に陥っても退こうともせず、社外取締役として言ってきたことの説得力が失われた。社外の取締役が部外者の目で色々と助言するのは有用な面もあるだろうが、経営責任まで負わせるのは酷で、基本はアドバイザー的な立場に留めるべきかも知れない。

2015年12月12日土曜日

雨男、晴れ女

冬の時期は晴れる日が少ない北陸への出張。なぜかこの日は雲一つない快晴。冬でもこんな日があるんだと独り言のように言うと、同行した協力先の女性が「私、晴れ女なんです。」といった。前回来たときは一日中雨が降り、立山連邦や白山は影も形もなかったが、今回はその絶景を拝むことができた。先月行われた大学のOB会のゴルフコンペ。予想に反して雨が降り出し、がっかりだったが、表彰式の時に挨拶に立ったOBの一人が「実は私は雨男で、会社の同僚とゴルフに行く時にいつも迷惑がられるんです。」と告白。確かに前回この人が参加した時も雨が降ったような。不思議なことだが、大学時代に山登りをしていた時からこうした話はよく聞く。本人が自覚するくらいだからよほどの確率と想像するが、気の毒なのは誰からも喜ばれない雨男・雨女だろう。いっそのこと、水不足で困っているところに行ってみてはどうかと思う。

2015年12月6日日曜日

爆買い

案の定、今年の流行語大賞にノミネートされた『爆買い』。たまにゴルフをご一緒する銀座の老舗宝飾店のマネージャーは、数百万円する商品を複数買って行くのは中国人か台湾人のお客さんのみと言い、大阪駅近くのドラッグストアでは店外に掲げられたバナーがほとんど中国語のみで、日本人はあまり歓迎されない雰囲気だ。名古屋駅前の店では中国語圏のお客さん専用と思しきレーンが設けられていて、長蛇の列ができていた。(他のレーンは行列もなく、すぐにレジを済ませられたのはよかったが。)中国人観光客の爆買いを批判的に捉える向きもあるようだが、日本人の多くが値段の安い輸入品を買うようになってしまった中で、外国人観光客が日本製の製品を沢山買ってくれることに何の問題があるのかがわからない。言われているように天安門事件以降に反日教育が始まったなら、その影響を受けた世代の人たちが日本に来ることで、学校で植えつけられた日本のネガティブイメージも変わっていく可能性があるだろう。(少なくともマイナスにはならない。)もちろん、そのためには買い物にせよ観光にせよ、日本が中国の人にとって魅力的な国であり続けなければならないが。

2015年11月28日土曜日

企業体質

不正会計問題が発覚した後、零細株主である私にさえ何度も送られてきたお詫び、そして体制刷新の通知。こんなものを書面で何度も全株主に送っていたら、それこそ費用もばかにならないだろうと思うと同時に、信頼を回復したいという新しい経営陣の必死さが伝わった。「そこまでやるなら本気かもしれない」と思いかけてきた矢先に流れた歴代社長提訴のニュース。その損害賠償額が歴代社長3人と、元最高財務責任者(CFO)の2人に対して合計で3億円という大甘ぶりと聞き、これまで書面で言ってきたことが全て説得力を失った。(ならばそんな無駄な金をかけて株主一人一人に何度も手紙など出さないでほしかった。)しかも、株主から歴代経営陣28人に総額10憶円の損害賠償訴訟を起こすよう請求され、60日以内に提訴に踏み切らない場合、株主が「株主代表訴訟」を起こすことが可能になっていたというから、厭々やっていたことが想像される。先輩への気遣いなのか、自分が同じことをしたときの保険なのかはわからないが、やはり企業体質は変わらないことを認識させられた。

2015年11月22日日曜日

酸化防止剤

近所のスーパーで売っていた酸化防止剤無添加のワイン。『酸化防止剤無添加』を謳うということは、その物質が体に悪いことを示唆しているが、ワイン好きとして知られた芸能人が胆管がんで亡くなり、晩酌に毎晩ワインを飲んでいた近所の女性も同じがんで亡くなった。生物学が専門の友人に聞いたところ、因果関係を立証するのは難しいが可能性は十分にあるとのこと。酸化防止剤は亜硫酸ナトリウムという物質で、酸化防止の他、変色防止、防かびなどの効果もあり、好ましくない色素物質を打消してきれいで鮮明な色調に整える目的でも使用されるそうだ。要は消費者の健康よりも商品の見栄えを気にしているということか。しかし、私は別の理由で酸化防止剤入りのワインを避けるようにしている。酸化防止剤入りのワインは独特のケミカルっぽい後味が残るからだ。アメリカ第2のワインの産地であるワシントン州から取り寄せているワインにはもちろんそのようなものは入っておらず、変な後味もしない。出張先の長野で、駅の構内で県産ワインが飲めると聞き、行ってみたが、どれもこれも酸化防止剤を添加していてがっかり。抗酸化物質のポリフェノールが多く含まれていて、心臓病の予防にいいと言われるワインだが、このようなグレーな物資を入れてしまった時点で飲むのは考えものだ。

2015年11月15日日曜日

独裁経営

来日したドイツの建設機器メーカーの社長。1964年に共産主義を逃れてアメリカに渡ったブルガリア人で、米系大手の建設会社の幹部にまでなった異色の人物だ。引退後に長年赤字が続いていたドイツの老舗建機メーカーを買収して立て直し、日本のメーカーの買収にも意欲を示している。米系大手在席中から数多くの買収を行ってきたが、全て欧米の企業。日本が好きだと聞いた時には、私に対するリップサービスもあるのではないかと思ったが、実際に会って話してみると、ビジネスマンとしての合理的な発想があることを知り、納得した。彼は長年世界中をまたにかけてビジネスをやって来た経験から、様々な国の国民性をよくわかっていて、世界中でドイツ人と日本人しか持ち合わせていない資質が3つあるといった。それは規律と品質へのこだわり、そして誠実さということだった。また、いくつもの会社を立て直してきた経験から行っていることがあるという。それは会社を買収した際には、給料が高い順に7名を問答無用で解雇するとともに、誰よりも早くから出勤して製造の現場に立ち、現場、そして現場で働く人を重視する姿勢を身をもって示すというものだ。高給を取っている幹部は現場とは一番遠いところにいて、赤字を招いた責任者であるということなのだろう。中には顔を合わせることなく解雇を通知する相手もいるそうで、本人から会いたいと言われると、「あなたのことを好きになってしまうかも知れないので、それはできない。」と断るのだそうだ。遠く離れた日本の企業を買収してどうやって経営するのかと尋ねると、彼は経営を任せられる人を常に社内で見つけるのだという。確かに今や彼自身がドイツにいることは少なく、会社の経営を実質的に任されているのはまだ30代の生え抜きの社員だ。何でも彼が会社を買収した後、早くから出社して彼がやることをじっと観察していたそうだ。彼が言っていたことでもう一つ興味深かったのが、独裁者であることの重要性だった。確かに合議制の大企業は意思決定が遅く、責任の所在が曖昧になりがちなため、経営環境が変わっても対応が遅れがちだ。彼は故スティーブ・ジョブズ氏を引き合いに出して、彼は大変な嫌われ者だったが、彼の独裁なくしてアップルの成功はなかったといった。彼の実体験に根差した話は興味深く、私もかねてより独裁者が悪いとは思っていなかったが、その独裁者が彼のように判断力がある人でないと、会社はより不幸な状況になってしまうだろう。

2015年11月7日土曜日

クレイマー

テレビでネットの書き込みに過剰反応する企業や個人に疑問を呈する番組を見た。昆虫を怖がる子供がいるという理由で学習ノートの表紙の写真を変えるのと、県産ブランド米のイメージガールの応募条件から色白というのを撤回するのは全く異質のもので、それを同義に語るのはいかがなものかと思ったが、色々なことを批判する人たちにいちいち反応するのはおかしいという番組の趣旨には共感した。そもそも匿名でネットに書き込みをして不満を述べたり批判したりするのは一部の人たちであって、その人たちの言っていることは世の大半の人の意見を反映したものですらない。ただ、この番組を放送した公共放送自身の報道のし方にも問題を感じる。例えば「被災地のがれきの受け入れを決めた市役所に市民からの電話が殺到し、その殆どが反対の声だった」などと言うが、わざわざ市役所に電話をかけるようなヒステリックな人たちは反対に決まっていて、市民全体の意見を反映しているわけではない。一方、この番組を見て不可解だったのが、先の学習ノートのメーカーの担当者が昆虫の写真の使用を止めるのは苦渋の決断だったと言っていたことだ。それを嫌がる子供が多いのであれば、やめるのは企業としてごく当たり前の経営判断であり、そうでないなら昆虫の写真を続ければいい。苦渋の決断をしなければならない理由は見当たらない。

2015年10月31日土曜日

判官びいき

来日したアイルランド人のクライアントに、ラグビーのワールドカップで日本チームを応援する人が多いのは、"underdog"(勝算が低いチーム)だからだといわれた。日本にも「判官びいき」という言葉があるが、弱い者が強い者を倒すのを痛快に思うのは万国共通なのか。しかし日本には「勝ち馬に乗る」とか「長い物に巻かれる」という表現があるように、判官びいきとは真逆の人が多いように思う。子どもの頃、「巨人・大鵬・卵焼き」という言葉を聞いたが、これも強い者に乗っかるのが好きな国民性を表しているのかもしれない。あまり野球に興味のない私だが、大枚をはたいていい選手を買っている球団は強くて当たり前で、応援する気にもならず、横浜と並んで地味な球団がリーグ優勝をしたことを喜ばしく思った。しかし日本シリーズでパリーグのG球団のようなチームに大敗するのを見て、いっそのことG球団が勝ち進んで日本シリーズで大負けするのを見た方がまだよかったかと思った。

2015年10月24日土曜日

T急不動産

うちの経理をお願いしている会計事務所が移転になり、うちと同様に原状回復費用として法外な金額を請求されたという。家賃2カ月分以内という業界の相場とはかけ離れた金額に文句をいったところ、では減額するので内容を問わずに●百万円払ってくれといわれたそうだ。うちがされたのと全く同じ手口で、聞けば同じT急不動産だった。工程表も示さず、費用の内訳も説明しない悪辣さについて営業先の銀行で愚痴ったところ、T急電鉄とT急不動産とも同社の取引先で、両社は同じ名前を名乗っていても資本関係の薄い別会社になっているといわれた。ネットで調べるとT急不動産の方は法外な原状回復費用の請求に加えて社員による取引先の恐喝、最近ではマンションの「騙し売り」で裁判に敗訴し、原告がこのときの体験談を本にして出版する等、ブラックな話に事欠かない企業であることを知った。大手私鉄の関連会社と誤解して入居してしまったが、ふたを開けてみると同社とは関係の薄い、タチの悪い会社だったわけだ。かつて在籍した電機メーカーはブランドイメージが損なわれないように、第三者の資本が一定以上入ったらその名前を名乗らせなかったが、T急電鉄は果たして同じT急を名乗っている企業がこのようなことをしていることを知っているのだろうか。

2015年10月17日土曜日

エリート社員

五輪エンブレム問題の黒幕と名指しされた人物の名前を見てびっくり。兄の幼馴染と同姓同名ではないか。よくいる名前でもないし、年齢もぴったり。兄に聞くと報じられている大手広告代理店に就職したのは間違いないとのことだった。年が違うので私は一緒に遊んだこともないが、母親同士が親しく、母から彼の母親の教育ママぶりについて聞いていた。当時から変な思想に染まらないようにと子どもにA新聞は読ませず、受験のために明大前の塾に通わせ、公立としては評判が高かった中学校に通わせるために久我山に引っ越した。(この件が報じられたのをきっかけに、私が中学生時代にこの塾に通うことになったのも、彼のお母さんに紹介されてのことだと知った。)兄の話では彼はクラスでトップの成績だったというが、経歴を見ると私と同じW大学の政経学部を出ている。卒業年から推察すると一浪したものと思われ、あのお母さんのことだから、東大を受験したものと推察される。(実際に同学部には東大志望だった人が多かった。)D通のマーケティング局長にまでなったのだから、小学生の頃の優秀さそのままに出世したものと思うが、国民の怒りを買うようなことをして更迭されてしまったのだから、何とも皮肉なことだ。あのようなことになるくらいなら、兄のようにふつうの成績でふつうのサラリーマンをやっていた方がまだよかったかもしれない。人生何があるかわからない…。

2015年10月10日土曜日

五輪エンブレム

インテリアデザイナーの知人との久しぶりの飲み。2020東京五輪のエンブレムの話題で、4名いた同席者が異口同音にK氏のものはどこがいいのかわからないといい、私だけではなかったことを認識した。本作が盗作がどうかはわからないが、作品のクオリティとしてはいかがなものか、出来レース説に説得力を感じてしまう。先日ゴルフをご一緒した大手広告代理店の人に聞くと、その人の古巣であるD通も一枚かんでいるが、ロゴの選考委員はH堂の息がかかった人が多かったという。新国立競技場の問題といい、五輪利権に絡もうとする人々の浅ましさを見せられると、本来主役であるはずのアスリートがかわいそうで、前回の東京五輪では関係者も国家事業としてもっと純粋に取り組んでいただろうから、日本人の劣化を象徴する悲しい現実を見せつけられた気がする。ちなみにK氏本人も盗作と認めた飲料メーカーのトートバッグについては、どれほど才能あふれるデザイナーであっても、あれほどテーストの違う作品を一人で作れるはずがない。スタッフにやらせていたと聞き、胴元が自分の名前と人の才能を使って収益をあげるビジネス構造を垣間見た気がした。

2015年10月3日土曜日

半熟卵

ゴルフ場の食堂で運ばれてきたキーマカレーに半熟卵が乗っていてがっかり。誰がこんなものを乗せろといった!最近の何でもかんでも半熟卵を乗せたがる風潮はいかがなものかと思う。卵をまぜると美味しくなる料理は多いが、誰もが半熟卵を喜ぶという前提は一体どこから来ているのだろうか。私が知る範囲でも半熟卵が好きでない人は結構いる。(私の場合もそうだが、卵自体が嫌いなのではなく、茹でたいのか茹でたくないのかはっきりしない中途半端さが気に入らないのだ。)半熟卵を売りにしたメニューならいいが、そうでなければオプションにするか「もれなく乗ってくる」旨をメニューに書いてもらいたいものだ。

2015年9月26日土曜日

防潮堤

9,000億円もの国家予算をつぎ込んで建設するという被災地沿岸地域の防潮堤。次の津波が日本のどこで起きるかもわからないのに、直近で起きた災害に反応して莫大な国家予算をつぎ込む国がほかにあるだろうか。費用対効果の概念が完全に欠落してしまっている中央官庁と自分の懐が痛まなければお金の使われ方に無頓着になる地元自治体。こうしたことが後世にどれほどの禍根を残すかを考えない人たちが予算の使い道を決めている国の将来が憂える…。

2015年9月19日土曜日

安保法

ふだん政治の話をしない人から安保法について意見を聞かれると、本件への関心の高さを感じる。政府は我々一般国民が知らないリスクを認識していて、国民を守るためにやっていると思いたいところだが、現政権(というか日本の政治家全体)に正しい時代認識、国際情勢認識があるのか、また、本当に憲法に違反していないのかという2つの疑念がぬぐえない。前者の国際情勢の認識に関しては、首相が外遊先でイスラム国を刺激する発言をして日本人の人質二人が殺害されるに至ったことや、靖国神社への参拝についてアメリカ政府に苦言を呈されたとたん慌てふためいて外相を“説明”のためにワシントンに送るところを見ると何とも心許ない(そうしたアメリカ政府の反応を見越した上で敢えてやるのならまだいいが)。安保法も合理主義のアメリカが日本を守るために中国と本気で事を構えることなどありえないという認識のもとにやっているのであればいいのだが、そのあたりもかなり怪しい。また、国会での答弁のぐらつきぶりが半端でない首相や防衛相がいくら合憲と主張しても説得力がない。今回の騒動はいずれ歴史の審判を受けるだろうが、それが取り返しのつかない事態が起きた後にならないことを願いたい。

2015年9月12日土曜日

原状回復

小さいながらも自ら会社を経営してみると、サラリーマン時代には考えも及ばなかった問題に遭遇する。5年間過ごした赤坂見附駅前の事務所の家主である某私鉄系のT急不動産から、今月期限を迎える定期借家契約を更新するのであれば、事務所の窓の前に広告用の懸垂幕を下げることに同意してもらうといわれた。外に面している部分が全面ガラスで開放感だけが取り柄のようなオフィスだったので、視界がなくなれば魅力も半減だが、それでいて家賃は下げないという。もともと建物の老朽化で空調や配管の不具合が頻発したこともあり、契約は更新しないことに決めた。すると今度は“原状回復費用”と称して1年分の家賃に相当する金額の支払いを要求してきた。これは入居時に保証金として同社に預けた金額とほぼ同じだ。この物件を仲介した業者も、新しい物件を探してくれた業者も原状回復費用は家賃2か月分以内というのが相場で、1年分などというのはありえないとT急の阿漕ぶりに驚いていたが、法律の専門家に相談すると、個人で住まいを借りるのとは違い、商売人(会社)どうしの契約は、テナント側があまり保護されないといわれた。改めて契約書を見てみると、なるほど当該費用については施工業者(関係会社)を含めて貸主が一方的に決めてよいよう内容になっており、この分野の専門家である貸主に悪意があれば好き勝手をされかねないことがわかった。当方が猛抗議したのを受けて、いきなり家賃半年分に下げてきたが、それでも相場の3倍以上だ。名のある不動産会社なので安心して入居したが、とんでもなく高い授業料となった。

2015年9月6日日曜日

報道の自由

大手居酒屋チェーンがブラック企業大賞を受賞して以来、この賞に関する報道が聞かれないと思ったら、昨年は大手家電量販店のY社が受賞していたという。なぜ昨年に限ってマスコミが報じなかったかといえば、この家電量販店が各メディアに支払っている広告料がばかにならないからだそうだ。「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」といった国会議員がいたが、こうした報道自粛でマスコミ自身がそのことを証明してしまった形だ。これは札束でマスコミのほっぺたをひっぱたける企業に都合が悪い報道がされないことを意味し、マスコミの存在意義にも関わる問題だろう。最近でも大手居酒屋チェーンがブラック企業のレッテルを貼られてからイメージダウンし、赤字幅が拡大したというニュースは報じられている一方で、直近の受賞者に関する報道は相変わらず見られない。本邦にも広告収入に頼らない公共放送があるが、民放のバラエティ番組の模倣をしては悦に入っているようでは多くは期待できない…。

2015年8月29日土曜日

稚内

先週予定していた入院で一度は諦めた久しぶりの休暇。今週と週末の予定をキャンセルした一方で木曜日に退院できたので、その足で空港に向かい、先週行くはずだった稚内へと向かった。そもそも稚内を選んだのは最近は札幌も夏は蒸し暑くなってしまったからだが、東京が暑い時期に行ってこそ意味があったのに、時期がずれたため、東京は既に涼しく、稚内は肌寒くなっていた。この町に来るのは大学時代以来だが、商店街が昔のままである一方で駅舎や道路が列車の本数や車の通行量の少なさとは不釣り合いに立派になっていた。道路脇には与党の元有力議員の跡を継いだ息子の二世議員のポスターが貼られていて納得した。それはさておき、空気がきれいで食べ物が美味しいところというのは転地療養にはうってつけだ。入院中の憂さを忘れて来週からまた頑張れそうな気がする。

2015年8月22日土曜日

急性膵炎

休暇先に向かう羽田空港で二日前に始まった腹痛が再発し、まともに歩けなくなった。空港内のクリニックに運ばれ、即入院との診断を受けて近くの病院に救急搬送されたが、搭乗ゲートがターミナルの端の方だったので、車いすでビル内を長距離移動し、クリニックから救急車まで担架で運ばれるときはいいさらし者で、意識がはっきりしていただけに恥ずかしかった。初めての救急車体験にテンションが上がるはずもなく、病院の救急治療室で検査を受けた結果、膵炎と診断された。これで飛行機に乗っていたら一体どういうことになっていただろう。膵炎というのは飲みすぎや石ができてなることが多いらしいが、最近はあまり酒を飲まないし、検査で石も見つからなかった。気分が悪くなったのは年甲斐もなくドカ食いをしてしまった後なので、思いつく原因はそれしかない。しかしそれを医者にいうのは恥ずかしかった。入院当初は体勢を変えるだけで腹部に痛みが走ったが、その後徐々に改善し、4日後には痛みがほぼなくなった。楽しみにしていた旅行とはまったく異なる休暇になってしまったが、外食ばかりで胃が膨張気味だった私にはちょうどいい静養になるかもしれない。

2015年8月15日土曜日

2年縛り

〇モバイルからの突然の電話。もうすぐ2年契約が切れる端末の更新を勧めてきた。前回契約を更新した際に以前より大きくて重たい端末に替えさせられ、さらに端末の不調で4回も修理・交換している。動作しているときでも急にスピードが遅くなったり通信が途切れたりとトラブル続きで、丸一日まともに使えた記憶がない。それに比べて後から買った○マックスの優秀なこと。さらに○モバイルは「隠れコスト」で有名な大手携帯電話会社に買収された後、端末のトラブルに乗じて保険の加入を勧められ、さらには使い放題の謳い文句で使い始めたのに、ある日突然ウェブ画面に「所定の通信容量を超えた」とのメッセージが出て、使い物にならないくらいのスピードに落とされた。画面にはスピードを元に戻すオプションが提示されるが、もちろんただではない。総務省が通信契約が2年ごとに自動更新されるいわゆる「2年縛り」の料金プランを見直すよう大手携帯電話会社に要請したが、○モバイルに関してはあまりにもトラブルが多すぎてペナルティを払ってでも途中解約したいくらいだった。企業体質というのはいつまで経っても変わらないもののようで、晴れて契約が終わったらさっそく他の会社に乗り換えたい。

2015年8月8日土曜日

日本海側一県飛ばしの法則

メーカー時代、金沢出身の同僚が日本海側の県は一県飛ばしで美人が多いといっていた。当然、石川県は美人が多いという話の流れになるわけだが、出張などで各地をまわると確かに新潟、島根、福岡など、彼がいう法則で美人県にあたるところでは美形を多く見かける気がする。新潟は背が高く顔立ちが整っている人、島根は端正な顔立ちの美形が多いように思う。ただ美人県から外れている鳥取の知人がいっていたように、県できれいに分かれるわけではなく、島根に近い米子は美形が多いといわれているそうだ。彼はその理由について米子は昔から半島との交流があったので血が混ざっているのだと説明したが、ということは土着の日本人はあまり美しくなく、大陸との交流があった(そうした港があった?)地域のみ美人が増えたということだろうか。血筋以外の要因でいえば、秋田の場合、常陸の国(茨城)からお国替えになった佐竹公が領内の美人を皆、秋田に連れて行ってしまったという説があるようだが、母方の祖母が茨城出身である私はコメントしづらい。ただ、こうした「法則」にはもちろん例外がある。一県飛ばしの法則を語っていた元同僚と勤めていたメーカーでいちばん美人といわれていた人(この人はおそらく万人が見て美人と思うだろう)は石川県の隣の富山の人だった。

2015年8月1日土曜日

東京五輪

新国立競技場問題の関係者がそれぞれ記者会見を開いて自分には責任がないと釈明する様は見世物としては面白かったが、肝心のコスト計算がでたらめだったことについてはいまだに納得のいく説明が聞かれない。文科省の責任が大きいというのは事実だろうが、責任転嫁をした人たちに責任がないかといえば、そんなことはないだろう。デザインは好みの問題としても、日本のような地震国でキールアーチなどというものを使ったデザインを採用すれば、耐震構造にするのに莫大な費用がかかることくらいは素人でも想像がつく。それをコストは自分の問題ではなかったかのようにいう建築家の発言は釈然としない。さらに大会に味噌をつけたのが五輪のエンブレムの盗作騒動と、好みの問題を超えたボランティアのユニフォームのダサさだろう。やることなすことすべて裏目に出て、本当にこの大会は成功するのだろうか。ただ、五輪の最大のリスクは東京で酷暑が続く今頃の季節に開催することだろう。外での運動は控えるように呼びかけられている時期にこうしたスポーツイベントを開いたらどのようなことになるのか。高温多湿に慣れた日本選手を利するならまだいいが、そもそもなぜこのような時期に東京で開催してしまったのかと後悔することにならないとも限らない。一層のことIOCに無理をいって、2022年の北京での開催の決定で2026年の冬季五輪の招致が難しくなった札幌に開催地を変更してはどうかとさえ思う。

2015年7月25日土曜日

チャレンジ

投資銀行時代、不正経理問題で話題の総合電機大手のT社には何度か伺ったことがある。会う相手の地位により、通されるのが応接室だったりオープンな会議スペースだったりしたが、後者ではベテラン風の女性が喫茶店のウェイトレスのごとく手慣れた手つきでお客に飲み物をふるまう様が印象に残っている。同社では「チャレンジ」と称して事業部門が利益のかさ上げを迫られていたと報じられているが、私がいた電機メーカーの事業部門ではその呼び名が「気合い」だった。もちろん根拠のない数字なのでそのような抽象的な呼び名がつく。また、報道で聞かれる「必達目標」という言葉の響きも懐かしいくらい、よく似たことが行われていた。ただ、T社との違いはインフラ系の事業をやっていなかっただけに、費用の計上を遅らせるなどの不正がやりづらく、営業利益をよく見せるために、上客の要請に素直に従う監査法人の「理解」のもと、営業外扱いだった収入を営業利益に含めたりというのがせいぜいだった。しかしこんな小手先のことをやってもいずれはつじつま合わせをしなければならなくなり、後の世代に負担を残すだけだ。社長の体面を守るために、こうしたことに手を染めさせられる社員は実に気の毒だと思う。

2015年7月18日土曜日

ミニマリスト

必要最小限のもので生活するいわゆるミニマリストが30代の人の間で増えているという。テレビで紹介されたミニマリストの生活に共感した。もともとシャンプーだの歯磨き粉だのといった昔の人が使っていなかったものが本当に必要なのかが疑問だったが、特にシャンプーは石油が原料の質の悪い界面活性剤が使われていて、頭皮のたんぱく質を破壊し、抜け毛のもとになるという話を聞き、使うのをやめている。このミニマリストは液体石鹸一本で体中を洗っているといっていたが、私は固定石鹸のみで何の支障も感じられないばかりか、シャンプーを使っていたときのような抜け毛もすっかり減った。調理器具も鍋と蓋付きのフライパンがあれば色々なものが作れ、素材さえよければ手の込んだものほど美味しいわけではないことも経験的にわかっている。部屋が散らかりだすと掃除が億劫になり、また要らぬものをため込んでしまうことも経験的にわかっていて、今後はミニマリストを目指して不要なものを捨てて行くようにしたい。

2015年7月11日土曜日

身元保証

転職する親族から頼まれた身元保証。思えば私も大手電機メーカーに勤めることになったときにそのようなものの提出を要求され、父親以外に叔父にも頼んだ記憶がある。本邦で昔から行われてきた慣習とはいえ、自分が採用した社員が問題を起こしたときにほかの人に責任を押しつけようというのだから、虫のいい話だ。雇った社員が思いのほか働きがよく、会社に貢献をしたからといって身元保証をした者に恩典があるわけではないので、アップサイドがゼロの不平等契約にも思われる。身元保証を頼まれるのは初めてだったのでどういったものかをネットで調べてみると、身元保証人がその社員に対して責任を負わなければならない期間は保証書に書かれていなければ3年、書く場合でも法律上許容される最長は5年とあった。渡された保証書を見ると5年と書かれている。合法とはいえ、入社してから5年間も社員に対する責任を負わせようというのだから、そうしたことを要求する会社にはどうしてもマイナスイメージをもってしまう。

2015年7月4日土曜日

新国立競技場

新国立競技場の建設費が当初の予定を900億円も上回るとのニュースを聞き、日本人もクオリティが落ちたものだと思った。作る計画だった屋根や自動移動式の座席を作らず、徹底的にコストを削っても当初計画の1.5倍以上かかるというのだから、建築資材の値上がり云々の問題ではなく、計画自体がでたらめだったとことは誰の目にも明らかだろう。こんなでたらめなことが起きたことについて納得のいく説明もないまま、「2520億円になった。今後、国費の負担を抑える工夫をしていきたい。」さらには改築費の一部を東京都に負担してもらいたいなどと平然といってのける文科大臣にも呆れるし、責任の所在についてつっこもうとしないマスコミにもがっかりだ。そんなレベルの人たちがやっていることだから、おそらく2520億円というのも現実的な数字ではなく、作ってみたらもっとかかってしまったということになるのだろう。2020年のオリンピックを境に経済的には衰退への道をたどるであろう我が国だが、オリンピック開催から10年も経たないうちに財政破たんし、最近はデフォルトまで取りざたされている彼の国のようにならないと果たして誰がいえるだろうか。

2015年6月27日土曜日

犬肉フェスティバル

中国で行われている犬肉フェスティバルが批判を集めているようだ。犬好きの私としては確かに犬たちがかわいそうに思え、反対したくなる気持ちはわかる。サラリーマン時代に同僚たちと行った韓国でも、私と実家で犬を飼っている同僚だけは犬料理の店には行かれなかった。ただ、日々牛肉を食べ、豚肉を食べている自分が犬の肉を食べるのを批判するのは偽善的であるというのもわかっている。日本が行っている捕鯨やイルカ漁に反対している人々は世界トップクラスの牛肉輸出国の人たちだったりするが、自国内で毎年何千万頭という同じ哺乳類が屠殺されている現実には目を向けず、他国の行為を批判しているのだから誤った正義感をもった人たちといえるだろう。①自国に牛肉や豚肉は食べる伝統はあっても鯨肉は食べず、②食肉加工場のような密室ではないオープンなところで漁が行われているからそれに反応しているのであれば考えが浅いとしかいいようがない。自らが菜食主義者になってあらゆる哺乳類の肉を食すことに反対するならまだわかるが、自分たちが食べない哺乳類の食肉にだけ反対するのはやはり偽善的というほかないだろう。

2015年6月19日金曜日

レコード

10年余り前に他界した父が遺したクラッシックレコードの数々。ほかに聴く家族もいないので、オークションでほしい人に売ろうかという話になった。壊れやすいものなので、落札者にどうやって送ればいいのかオフィスの出入りの宅配業者に尋ねたところ、「レコードってどういうものでしたっけ?」と聞かれてしまった。そう。今の若い配達員はレコードを見たことがないのだ。自分が子どもの頃に蓄音機ってどういうものだろうと思ったのと同じ感覚だろうか。そして若い配達員の目にはレコードを知っている私が当時蓄音機を知っていたおじさん、おばさんたちのように見えてしまうのだろうか。ひょんなことから自分が当たり前に歳をとってしまったことに改めて気づかされた。

2015年6月13日土曜日

白髪

2年ぶりにお会いした某社の社長がまだ40代なのにすっかり白髪頭になっていて驚いた。思えば前回お会いしたときに年商千数百億円の会社の社長職を継いだばかりだったので、その後色々と苦労があったのかもしれない。大阪で教員をやっている友人はまだ30代のときに当地で底辺校と呼ばれる高校に赴任して一挙に白髪頭に変わった。こうした事例を目にすると、白髪になるのは年齢以上に精神的なストレスの要素が大きいように思われる。かくいう私は年相応にもみあげのあたりから白髪が目立ち始め、オリーブの果汁でマッサージすると効果があると聞いて実践してきたが(実際に白髪が目立たなくなったので驚く)、この一週間ストレス続きで、ふと鏡を見るとこれまで白髪がなかった頭の上部までちらほら混じっていた。髪の毛が伸びるのにはそれなりに時間がかかるので、一夜にして白髪になったなどという話はにわかには信じられなかったが、自分の身に起きてただただ驚いてしまった。この上はもみあげのあたりだけでなく、頭全体をオリーブ果汁でマッサージしようか。いや、それよりストレスの原因をなくす方が早いかもしれない。

2015年6月6日土曜日

安全保障関連法案

憲法審査会で政府が頼んで出席した学者まで憲法違反と発言した安全保障関連法案。ときにニヤケ顔で論点をそらし、ときに質問する野党議員に「早く質問しろよ。」と暴言を吐く首相に、答えに窮してしどろもどろな答弁を繰り返す防衛大臣。これほど低レベルな政治家が、今の先進国といわれる国々の中に存在するだろうか。昨年の総選挙で与党が圧勝したときから半ば予想されていたが、正面から憲法を改正するのではなく、憲法違反といわれる法案をゴリ押ししようとする姿勢に、将来に大きな禍根を残すのではないかと心配になる。真宗大谷派などの宗教家もが懸念を表す一方で、「平和の党」を自認してきた教団系の政党までもが与党にとどまりたい一心でか、法案の推進に加わっているのも皮肉なことだ。

2015年5月30日土曜日

人命軽視?

口永良部島噴火のニュースでかき消せれた感がある箱根山の火山活動。大涌谷のような場所がある時点でアクティブな火山であることがわかるが、火山活動の周期は人の寿命と比べて長すぎて、しょっちゅう爆発している火山でもなければ、噴火が起きることなど想像もせずに観光している。箱根と名のつくところがすべて危険なイメージになって観光客が減っていると聞き、久しぶりに行ってみようかなどと思ったりしたが、箱根町が給湯設備の保守のために立入禁止区域に人を入れようとしているというニュースに首をかしげた。テレビに防護服のようなものを身につけた人が映っていたが、実際に噴火が起きたらそんなものは何の役にも立たないことは素人でもわかる。火山活動が活発化している兆候がありながら警戒レベルを引き上げなかった御嶽山の噴火のときもそうだが、観光へのダメージを避けるために人命を軽視するのはいかがなものかと思う。

2015年5月23日土曜日

消耗戦

シャープ苦境の報に触れ、投資銀行時代に当時の同社のCFOのお供で欧州の機関投資家まわりをしたことを思い出した。夜到着するCFOのためにパリの和食屋に頼んでおにぎりを用意してもらい、空港からホテルに向かう車の中で食べてもらったことや、パリの有名フランス料理屋で一緒に食事をしたこと、道路の渋滞でシャルルドゴール空港から乗る予定だったフライトに遅れてしまったことなどが思い出された。ほんの10数年前のことだが、当時はこんな日が来るとは思いもよらなかった。苦境の原因はジャパンディスプレイとの値下げ競争というが、この業界で変わらないことといえば、こうした消耗戦を通じて皆が貧乏になっていくことくらいだろうか…。

2015年5月16日土曜日

法治国家?

志布志事件の裁判の報に触れ、いわゆる郵政選挙のときに同じ鹿児島の選挙区から出馬した当地出身の弁護士の話を思い出した。自らが立てた「刺客」候補の応援で全国を駆け回っていた当時の小泉首相が、彼の応援をするために鹿児島入りすることができなかったというものだ。その理由は誰もヘリポートを貸さなかったからで、代わりに武部幹事長が来たという。(小泉首相が応援に行った先の候補はことごとく当選したが、武部氏が行った先は皆落選したという話の真偽は不明。)志布志事件は警察や検察などの公的権力が地元の権力者に敵対する者を排除しようとした法治国家とは思えない事件だが、度合いこそ違え、それと似たようなことが起きているのが群馬だろう。安倍首相の米国議会での演説が新聞の一面を賑わせたのと同じ日に、小渕代議士の利益供与事件の首謀者とされる人物が起訴されたというニュースが小さく報じられた。群馬の地元政界に詳しい人の話では、起訴されたといっても帳簿の記載ミスという軽い犯罪で、さらに世間の注目を浴びないよう、安倍首相の米国議会での演説のタイミングとぶつけたのだそうだ。警察のみならず検察までもが時の権力におもねるようになって果たして正義など達成されるのだろうか。この国の先行きが心配になった。

2015年5月9日土曜日

北海道移住

札幌で面談した当地の地方銀行の人が私の名刺に書かれている住所を見て懐かしそうに「私が卒業した高校の近くです。」といった。うちの事務所の近くの高校といえばあの都立の名門高だ。だが、なぜ東京出身の人が北海道の銀行に勤めているのか。聞けば震災を機に東京のメガバンクを辞めて家族で移住したのだという。北海道での生活がえらく気に入っているようで、私も移住してはどうかと勧められた。札幌は父が中学校時代を過ごしたところで、祖父の帰任で家族が東京に引き揚げた後も卒業まで一人残るくらい気に入っていたところだ。札幌であれば適度に都会で自然も身近にあり、食べ物もおいしい。老後は南の島でのんびりなどと思っていたが、実は北もありかもしれない。

2015年5月3日日曜日

インフレ

「経済政策はしばらく安倍さんに任せるしかないね。」ゴルフをご一緒した注文住宅会社の前社長がいった。確かに株価は上がり、久しぶりに賃上げのニュースも聞かれるようになり、景気がよくなっている雰囲気はある。しかしインフレ状態ではあらゆる数字が上がって当たり前。重要なのはインフレの影響を差し引いた後の“実質”数字がどうなっているかだ。賃金が多少上がっても、物価がそれ以上に上がっていては意味がない。だからこそ“実質”と名のつくデータがあるはずだが、このごく当たり前の点に触れた報道があまり見られない。報道している側がそうしたことを理解していないからだろうか。スーパーに行くと円安と消費増税の影響もあってか、ものの値段が半端なく上がっていることに気づく。これで景気回復を実感している人がどれくらいいるのだろうかと思う。

2015年4月25日土曜日

退職のお知らせ

大型連休を前に立て続けに届いたメーカー時代の同期入社からのメール。退職といっても定年はまだ先のはず。同社が大規模な人員整理を進めていることは周知の事実で、昨年は退職を“勧告”された、いわゆるバブル入社組から再就職の相談を受けたが、いちばん守られていたはずの本社部門の正社員まで対象になっているようだ。その甲斐あってか?業績見込みは珍しく上方修正。それしか生き残る道がないからしかたがないということか。最近、某ビジネス誌から同社について取材の依頼があった。同社の復活があるかというテーマのようだったが、それは何をもって復活というかだろう。かつての黒物家電の雄としての復活は難しいかもしれないが、人員整理などでエレクトロニクス事業の出血を止めれば、ほかの事業は利益があがっているようだから、会社としては存続するだろう。皮肉なことは今日の事態を招いた過去のマネジメントがたんまりと退職金をもらっていなくなっている一方で、“終身雇用”のつもりで入社した何の罪もない人々がとばっちりを受けていることだろう。

2015年4月18日土曜日

Hidden costs

アメリカでよく耳にした言葉。文字通り「隠れたコスト」の意で、値段を安く見せかけておいて、実際にはお客の目に見えないコストを付加するあこぎな商法。日本では比較的少ないが、最近利用している「送金手数料が安い」と謳う海外送金サービスが実は為替レートが非常に悪く、とても高くついていることに気づいた。銀行で送金すると手数料が4000円ほどかかるので、少額を送金するにはもったいなく感じ、このサービスを利用し始めたのだが、タイにまとまったお金を送金した際に、バーツのレートが非常に悪いことに気づいた。その後シンガポールに送金する際に銀行の送金レートと比較したら、2%以上悪かった。この会社のたちが悪いのは、送金する際のレートが一般に使われている対外貨ではなく、対円で表記されるようにし、利用者にわかりづらくしていることだ。為替レートはどのように決めているのかメールで問い合わせたところ、送金の際の問い合わせにはすぐに返事が来るのに、まったく返事が来なかった。利用者が多いサービスなので、私のようにレートが悪いことに気づいている人は少なからずいるはずだが、その会社のサービス名や「為替レート」「銀行」「比較」など色々な用語で検索しても、同社のサービスのページがあがってくるばかりで、一般利用者の声などはいっさい出てこない。ネットでビジネスをしているだけにネガティブな書き込みを封じ込めるSEO対策ができているのかもしれないが、こうしたことがまかり通るとネットの世界ではたちの悪い業者がますますはびこりかねない。

2015年4月11日土曜日

選挙権

早ければ来年から選挙権をもつ年齢が18歳に引き下げられるという。ゴルフ仲間でその是非が話題となったが、一人が18歳に引き下げるだけでなく、若い人には二票分与えた方がいいのではないかといった。なるほど。若者の多くが選挙に行かないのは何も変わらないからという思いが強いからと聞くが、一人で二人分の票を与えられれば、もっと投票に行く気になるかもしれない。また、ランニングコストを考えない公共事業や膨らみ続ける財政赤字といった今の政治のツケが回ってくるのは彼らの時代だ。選挙区による一票の格差は民主主義の精神に反するが、「世代間搾取」といわれる今の状況を改善するための、年齢による票の格差はあってもいいかもしれない。

2015年4月4日土曜日

隔世遺伝?

「ねえ、セブンイレブンに行こうよ~。」事務所に遊びに来ていた今年小学校にあがる甥っ子がいった。コンビニに行きたいなどと言い出すのは初めてのことだったので、どうしたことだろうと思ったら、遊んでいたDSで使うためのプリペイドカードが欲しいのだという。親の承諾なしにそうしたものを買うわけにもいかず、「ママがいいと言ったら」とかわしたつもりが、「いいって言ってたよ」と一歩も引かない。その後も買うの買わないののやり取りが延々と続いた。かつて祖母から、父が子どもの頃、欲しいものを手に入れるためには一歩も引かず、根負けして買ってあげてしまっていたという話を聞いたことがあるが、どうやらこの甥はそんな父の血を受け継いでしまったようだ。父は甥が生まれる前に他界しているので、直接会ったことも、ましてや影響を受けることもなかったが、こうした性格が遺伝するというのが興味深い。

2015年3月28日土曜日

潔癖症

幼馴染のヒロシの実家のとんかつ屋。おじさんが早くに亡くなった後もおばさんが続けている。当のヒロシは大学から青森に行ったきりだったが、先日とんかつを食べに行ったとき、おばさんから今年の春に店を継ぐために東京に戻ってくると聞いた。去年のねぶた祭のときに青森で一人暮らししているアパートに泊めてもらったが、彼が当地で経営しているカラオケボックス同様、塵一つ落ちてない潔癖症ぶりに改めて驚かされた。そのとき彼から母親のとんかつ屋のそうじが行き届いていないと聞かされたが、当のおばさんの方も潔癖症の彼が帰ってくることをちょっと心配しているようで、「あんまりうるさいことをいうからお嫁さんもうんざりしたっちゃんじゃないの。」といった。そういえば彼の口から離婚の理由を聞いたことがない。それにしても潔癖症というのは不思議なもので、遺伝するものでもないようだ。お客の立場でいえば、潔癖症の彼に経営が変わることでテーブルも椅子も昔のままのとんかつ屋がどのように生まれ変わるのか楽しみでもある。

2015年3月7日土曜日

バンコク

商用で久しぶりに訪れたタイのバンコク。当地に駐在した日本人はたいがい帰りたがらず、現地にとどまるために転職したり現地採用に切り替えたりする人もいるが、今回の出張でも当地に定住してしまった日本人にお会いした。かつて大手証券会社のディーラーとして活躍した氏は離婚したオランダ人の妻に財産をすべてとられて(それがオランダの法律という)、一人バンコクで生活している。なぜそれほどタイがいいのか聞くと、テキトーなところと答えた。タイはドイツ人にも人気が高く、昔からその姿をよく見かけるが、知り合いのドイツ人夫妻など、仏教に改宗してしまったというからすごい。日本人とドイツ人の共通点はまじめでよく働くといったところだろうが、私が知るタイにはまってしまった日本人もガリガリ働いていた人たちが多く、母国の環境がそれを許さないだけで、本音のところでは皆テキトーにやりたいのかもしれない。

2015年3月1日日曜日

しなの

名古屋出張の帰りに長野に寄った。「寄った」といっても名古屋から長野まで在来線しかないので、もっとも速い特急しなの号でも3時間かかる。名古屋から3時間といえば新幹線であれば山口県まで行かれてしまう。松本まで2時間で長野まではさらに1時間もかかるが、調べてみると長野から県南部の飯田までは最短でも3時間、鉄道で行こうとすると4時間もかかる。面積が広い上に山で分断されている長野県は県内の移動が大変だが、県庁所在地である長野が北に寄り過ぎているというのも否めない。かつては県を南北に分割するという議論があったそうだが、分割しないのであればより中心に近い松本に県庁を置くのが妥当だろう。中央線沿線に住み、松本の方がなじみが深い者としてはなおさらそう思う。

2015年2月22日日曜日

リー・クアンユー

シンガポールのリー・クアンユー元首相が重い肺炎で入院したというニュース。聞けば御年91歳とのこと。企業を創業した人物は数多いるが、一つの国を作り上げた人物というのはそういないだろう。何年か前にスリランカを旅行したとき、訪問した南部の茶園のオーナーが、自らが経営するゴルフ場にやってきた若き日のリー氏とゴルフをしたときのことを語ってくれた。独立したばかりのシンガポールは当時まだ貧しく、内戦が始まる前のスリランカの豊かさを目にして、「いつかシンガポールもこの国のように繁栄させたい」と語ったという。正しい経営判断を続ける企業はどんどん発展し、誤った経営判断を続けるとどんな大企業でもいずれは落ちぶれてしまうが、国も同じではないかと思う。一人当りGDPであっという間に日本を追い越してしまった同国だが、リー氏のリーダーシップと同国の優秀な官僚たちがいなければ成しえなかったことだろう。

2015年2月14日土曜日

北陸新幹線

久しぶりの北陸。京都から金沢、富山と回り、飛行機で東京に帰ったが、金沢も富山もいよいよ来月に迫った北陸新幹線の開業で大盛り上がりで、金沢は駅周辺の地下道が整備され、西口側も見違えるようにきれいに整備されていた。一方の富山はまだ工事が続いていて、列車を降りてから臨時改札口にたどり着くまでずいぶん歩かされた。思えばこの数年間、富山駅は来る度に駅の入口が変わっている気がする。東京では昨年から北陸新幹線のテレビCMが流され続けていて、あれではこの冬に北陸を旅行しようと思っていた人が思いとどまるのではないかと思ったが、そのためか金沢も富山も観光客らしき人が少なく、ホテルも驚くほど安かった。東京に住んでいる者としては空港が遠い金沢へのアクセスがよくなることは有難いが、富山でお会いした人が大阪にはもう何年も行っていないといわれていたように、北陸新幹線の開業が東京への一極集中にさらに拍車をかけるのではないかと思う。そしてそれを強力に後押ししているのが大阪を本拠とするJR西日本であるのが皮肉に思える。

2015年2月7日土曜日

小麦粉商売

久しぶりの鳥取出張。訪問先の人にお土産に何を買ったらよいか聞くと団子を勧められた。京都をしのぐレベルの松江の生和菓子ならともかく、団子などというのはそれほど味に差が出るものとは思えない。もっといえば小豆も使わず小麦粉のみを原料とし、大した手間もかかっていないので相当原価は安いはず。以前、積極的に海外展開を進める大手うどんチェーンの人に、「原価はただみたいなものでしょう」とやや失礼な質問をしたら「はい」と素直に認めた。小麦粉しか使っていない食べ物は原価が低い分、粗利がとれるため、お客さえ入れば大きな儲けが出る。この団子も鳥取の定番のお土産とあっていちばん目立つところに陳列してあり、後で地元の銀行の人から作っている会社の社長は大変な大金持ちになっていると聞いた。しかし、すぐに原価を考えてしまうメーカー出身者としてはお金がかかっていないものに不相応な値段を払う気にならない。代わりに買った伊勢の赤福に酷似した栃餅は目立たないところに陳列されていたが価格が妥当で赤福よりもよほど美味しく、なぜこちらがもっと評価されないのか不思議だった。

2015年1月31日土曜日

中東

アラブ諸国を歴訪して経済支援の大盤振る舞いをしたかと思ったら、イスラエルで首相とニコニコ顔の握手。こんなことをやって何の効果があるのだろうかと思っていたところに発生した人質危機。石油の確保のための最低限の外交は必要だろうが、黙っていれば絡まずに済む領域にまでわざわざ踏み込んで下手に過激派を刺激したのだとすれば、外遊は明らかに失敗だったといえよう。大手商社に勤める友人からリビアに長期出張していたとき、前日までふつうに生活していた外国人が突然姿を消したと思ったら政変が起き、日本人だけ取り残されたという話を聞いた。今回の人質危機でも情報収集すら自力でできないお粗末さが露呈したが、そもそも国民を守る実力がない国が「テロに屈しない」等と威勢のいいことだけいっても国民を更なる危険に晒すだけで、こうした国が中東という厄介な地域に関わるには慎重であるべきだろう。

2015年1月24日土曜日

Awesome

長年日本に住んでいるアメリカ人のジャクソンさん。勤めているホテルの営業で、たいした客でもないうちにわざわざ手土産を持って来てくださる。たまにはお返しをと思い、お昼にお招きし、初めてゆっくり話をする機会を得た。氏はアメリカのインディアナ州で生まれ育ち、大学生のときに来日。上智大学に通い、そのまま日本に残ったため、もはやこちらに住んでいる年数の方がよほど長くなっている。そんな氏が里帰りをすると、若い親戚から英語が“オールドファッション”だといわれてしまうそうだ。また、今やアメリカ人がしょっちゅう口にするようになった"awesome"(すばらしい)という表現は氏がアメリカにいた頃(おそらく1970年代まで)は使われていなかったという。いわれてみれば私が高校時代に留学していた1980年代は"great"とはいっても"awesome"などという人はいなかった。すっかりアメリカから足が遠のいてしまった私が話す言葉も今の若いアメリカ人にはオールドファッションに聞こえてしまうのだろうか。ジャクソンさんの話を聞いて少し気になった。

2015年1月17日土曜日

以心伝心?

週末はほとんどかかってくることがない携帯が鳴り、液晶画面を見ると「北九州」と表示されていた。今月商用で当地を訪ねることになっているが、週末に電話をかけてくる相手など思い当たらない。電話をとると幼馴染のK君からだった。長期の休暇をとって一人九州の実家に戻っているとのこと。そしてふと私がよく出張で福岡に来ていることを思い出して電話をしてきたのだという。よく行くといっても年に数回のことで、私が行くタイミングで電話がかかってきたことに驚いた。また、今回はいつもになく余裕のある出張スケジュールで、且つ福岡から北九州に移動するときに彼の実家がある町を通ることになっていた偶然にも驚いた。思えば彼が前回突然電話をしてきたのは昨年の夏で、このときもたまたま私の予定が空いているタイミングで青森に住む幼馴染に会いがてらなぶた祭を見に行こうと誘われた。こうした絶妙のタイミングで連絡をして来る彼は実に不思議な存在だ。彼との電話を切った後、ふと思い立って翌週に出張する松江の知人にお茶をしないかとメールしたところ、その直後にその知人を紹介してくれた松江の別の知人からメールがあって、またまた驚かされた。これが以心伝心というものか。

2015年1月11日日曜日

リニア新幹線

リニア新幹線が名古屋から大阪まで延伸されるのが2045年と聞き、ずいぶんのんびりしたことをいっているなと思った。建設費云々は、採算の目処が立てば何とかなるはずなのに東京・名古屋間よりも20年近く遅らせるなど、大阪を競合上不利にしかねない。そんな折、名古屋に駐在したことがある大阪出身の人に営業成績がさんざんだったという話を聞いた。初めて訪ねた先にどこの出身か聞かれ、「大阪」と答えると「こちらに親戚でも」と聞かれ、「いません」と答えるとそこで会話も営業も終了したという。名古屋でそのような経験をするのは大阪出身の人だけで、同じ3大都市圏といわれる当地に強烈なライバル意識をもっていると感じたそうだ。名古屋でも若い世代の人たちはそうしたこともなくなっているというが、JR東海の幹部はおそらく前の世代の人たちで、それゆえにリニア延伸に消極的なのかと勘ぐってしまう。それにしても東海道新幹線がJR東海の経営下にあるからといって、リニアまで大阪までの全線をJR東海にやらせる必要があるのだろうか。名古屋以西をJR西にやらせれば開業時期も早まるような気もするが。

2015年1月3日土曜日

おもてなし

「おもてなし」を売りにする我々日本人が実際にはおもてなしができたいないという記事を読み、我が意を得たりと思った。長旅で疲れている外国人を所定の時間までチェックインさせないというのがその最たる例で、それは外国人に対してだけではなく、我々日本人に対しても同様だ。岡山駅前にある大手航空会社系のホテルでも、広島駅に隣接するJR西日本が経営するホテルでも、さらにその向かいにある米系の大手ホテルでも早く到着しても荷物を預けることしかできない。松江に至ってはアーリーチェックイン(所定の時間の前にチェックインする)ができるホテルというのがいくつかあって、それらはすべてその分の追加料金を徴収するという有様。掃除が済んだ部屋にお客を通してもホテル側に何ら損失はないはずだし、現に外国のホテルでそれをやっていないところを見たことがない。なぜこうした「おもてなし」に反することが日本でだけ起きるかと想像すると、マニュアルにないからだと想像する。日本人はマニュアル通りに事を行うのが得意だが、それを忠実に守ろうとする余り、融通が利かない。ただ、うちが海外からの来客を泊めている東京のホテルでは部屋が空いていればチェックインさせており、外国人が多いホテルであればこうしたことがちゃんとできているのだ。「おもてなし」を謳い、海外の観光客を誘致したいのであれば、顧客本位の臨機応変さが必要だろう。