2015年9月12日土曜日

原状回復

小さいながらも自ら会社を経営してみると、サラリーマン時代には考えも及ばなかった問題に遭遇する。5年間過ごした赤坂見附駅前の事務所の家主である某私鉄系のT急不動産から、今月期限を迎える定期借家契約を更新するのであれば、事務所の窓の前に広告用の懸垂幕を下げることに同意してもらうといわれた。外に面している部分が全面ガラスで開放感だけが取り柄のようなオフィスだったので、視界がなくなれば魅力も半減だが、それでいて家賃は下げないという。もともと建物の老朽化で空調や配管の不具合が頻発したこともあり、契約は更新しないことに決めた。すると今度は“原状回復費用”と称して1年分の家賃に相当する金額の支払いを要求してきた。これは入居時に保証金として同社に預けた金額とほぼ同じだ。この物件を仲介した業者も、新しい物件を探してくれた業者も原状回復費用は家賃2か月分以内というのが相場で、1年分などというのはありえないとT急の阿漕ぶりに驚いていたが、法律の専門家に相談すると、個人で住まいを借りるのとは違い、商売人(会社)どうしの契約は、テナント側があまり保護されないといわれた。改めて契約書を見てみると、なるほど当該費用については施工業者(関係会社)を含めて貸主が一方的に決めてよいよう内容になっており、この分野の専門家である貸主に悪意があれば好き勝手をされかねないことがわかった。当方が猛抗議したのを受けて、いきなり家賃半年分に下げてきたが、それでも相場の3倍以上だ。名のある不動産会社なので安心して入居したが、とんでもなく高い授業料となった。