2017年12月30日土曜日

重大インシデント

運行する鉄道会社が非難の的となった新幹線の台車断裂事故。事の重大性を考えると異音・異臭が報告されながら運行を続けた鉄道会社は責められて然るべきだろうが、耐用年数内なのに断裂した台車を製造したメーカーの責任が一切問われないことに大いに違和感を覚えた。同社製の台車を使った車両が危険となるとパニックが起きかねず、また、そうした車両を使わないと営業上支障が出るため、製造者側の問題には一切触れないようにしているものと想像するが、「重大インシデント」とまで呼んでいる監督官庁が断裂の原因を究明し、公表すべきは公表した上で、なぜ同社製の他の車両は安全と見なし、運行を続けさせているのかを明らかにするのが筋だろう。

2017年12月24日日曜日

保守王国

ちょうど広島高裁が愛媛県の伊方原発3号機の運転差し止めの判決を下した日に松山に滞在していた。いうまでもなくNHKのローカルニュースで大きく取り上げられたが、県議会で加計学園の獣医学部新設の判断の過程を明らかにするよう求める決議案が否決されたとのニュースも一瞬流れた。判断の過程を明らかにするというのは極めて妥当な要求で、それを否定するのは隠し事があるといっているに等しいと思うが、どの政党が反対して否決されたのかをあえていわない公共放送の「忖度」ぶりにいちばん驚いた。最近我が国がチェック&バランスが機能しない後進国体質になりつつあると感じるが、地方の「保守王国」といわれるところでは、チェックする側のマスコミまで地元の権力構造に取り込まれているのだろうかと思った。

2017年12月16日土曜日

エルサレム

トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことは、アメリカで少数派のユダヤ人がその豊富な資金力を背景に世界一の大国である同国の政治を動かしている現実を再認識させる出来事だった。アラブ人が住む土地を武力で奪っても国際社会の制裁を受けずに済んだのは、ひとえにユダヤ人ロビーが動かすアメリカ政府がイスラエルに肩入れしてきたからだが、イスラエルが一方的に引き起こした問題でどれだけの人々が犠牲になっているかを考えれば、どちらに理があるかは明らかだ。ところが情けないことに我が国は「中立」を決め込んでしまった。「中立」などというくらいなら何もコメントしない方がまだましで、そんな理不尽な政権が他の国際問題で平和主義だの国際協調だのいっても何の説得力もない。

2017年12月10日日曜日

異次元の金融緩和

「国債が値下がりしたら地銀(地方銀行)は皆アウトですよ。」ゴルフ帰りにメガバンクのOBがいった。日銀の金融緩和策で貸すあてのない資金を国債の購入につぎ込む羽目となった地銀は、保有する国債の価値が目減りすると自己資本比率が基準を割り込む事態になりかねない。これにゼロ金利政策による利ざや(本業の儲け)の喪失が追い打ちをかける。いわれてみれば、付き合いのあった地銀の行員が最近相次いで転職したり事業を立ち上げたりしている。いずれも将来を嘱望され、M&A等のエリート部署に配属されていたような人たちばかりだ。地元に残りたいから地銀に就職しているはずなのに、東京の会社に転職する人さえいるので、よほど銀行の先行きに不安を感じていたのかもしれない。国債が何かのきっかけで暴落でもしたら、多くの地銀が一挙に破たんする可能性もあり、地方の経済は大混乱、事態収拾のために必要な大量の資金は国民が負担することになる。「異次元の金融緩和」などとはしゃいでいる日銀総裁や、人口の自然減による雇用状況の改善すら何ちゃらノミクスの成果と主張する首相はいったいどう責任を取るのだろうか。もっとも彼らのことなので、そのような事態に至るのは自らの任期を終わった後という読みがあるか、あるいは「コントロール外の要因」のせいにするつもりかもしれない。オリンピック後に予見される我が国の緩やかな衰退が、彼らの金融政策の失敗で急激な「落ちぶれ」に変わらないことを祈るばかりだ。

2017年12月3日日曜日

モノ作り日本?

「次に買うのは韓国車。」昨年トヨタ車を買ったばかりのカナダからの来客の言葉に、かつてアメリカの知人がいった言葉を思い出した。その知人は何10年にもわたって日本メーカーの大型テレビを買っていたが、「次に買うのはサムスン。」といったのだ。あれから10数年、テレビのみならず家電の世界での日本のプレゼンスは衰退の一途をたどった。思えば半導体もかつては日本メーカーが席巻していたのが、今は一部の分野を除いて見る影もない。韓国メーカーが急速に台頭できたのは日本の技術を盗んだからという向きがあるが、技術を売りに行ったのは日本のエンジニアであり、彼らにそのような行動をとらせた一因は、世の中の変化のスピードについて行かれず業績不振を招き、社員の忠誠心を失わせるくらいにリストラを行った日本企業の経営陣にある。また、自動車や家電製品といった一般消費者向けの製品についていえば、日本製は総じてデザインがダサい。カナダの来客が韓国車を選ぶといったのは、レンタカーで借りた韓国車の乗り心地がよく、使い慣れているトヨタ車に比べても電子機器の操作がわかりやすく、しかもデザインが洗練されているというのが理由だった。一方、トヨタ車の方は本来自動的に消えるはずの車内のランプが消えず、操作方法を調べてようやく消したという。日本のメディアはしきりに「モノ作り日本」などと世間知らずなことをいい続けているが、売れる製品作りに必要なのは技術オタクではなく、ユーザーにアピールするデザインや機能(ソフト)の部分であり、例えば自分が得意としていないことは外国のデザイナーを雇ってでも売れるモノ作りに徹する外国メーカーの柔軟さに学ぶところは大きいのではないかと思う。