2014年11月29日土曜日

ブランド価値

イオンの失速は安い量産品を求める人々と、多少高くてもプレミアム感のある商品を求める人々との二極化が進んでいることを象徴しているかもしれない。今週西日本でお会いした業界関係者は、後者の商品を求める顧客層が買い物をする大丸ピーコックを買収し、前者の商品を売るイオンのお店に変えてしまったことがイオンの失敗の一例といわれたが、確かに都心に住んでいたときに利用していたピーコックは購買力のある人々が住む地域に立地し、イオンや西友よりワンランク上の商品を置いていた気がする。ピーコックの消滅で兵庫県あたりではいかりスーパーが後者の層の支持を一身に受け、大繁盛していると聞く。我が古巣ソニーの凋落を見てもプレミアム感のあるブランドをもつことの大切さが実感される。私が在籍していた20年前はオーディオ製品が市場シェアでトップを占め、正に飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、今にして思えば量産ビジネスに大きく舵を切り、しかも品質管理が不十分でさんざん不良を起こしていたことがソニーブランドがもつプレミアム感を失わせたように思う。アジアや欧州ではかなり名の知れていたアイワを完全子会社化したときには安い量産品と高いプレミアム商品とでブランド分けする好機だったが、ときのマネジメントはなぜかそれをやらなかった。ブランド価値を毀損してまで市場シェアを追うことが正しかったのか。ここに来て答えが出ているような気がする。

2014年11月20日木曜日

W大の没落

我が母校W大が永遠のライバルK大の滑り止めに成り下がっているという記事を読んだ。最近の調査で両校に合格した学生の大半がK大を選ぶことがわかったというものだが、長年W大のピントはずれな経営を見てきた者としては驚くに値しない。やみくもに学部を新設し、学生数を増やすだけ増やせば当然粗製乱造となってクオリティは落ち、「需給バランス」も崩れ、同大卒であることの価値が下がる。そして価値の下がった卒業証書をもらうためにその大学を選ぶ学生が減るのも当然のこと。学部を新設するにしても世の中のニーズを的確にとらえ、学生に魅力的に響く名前にし、実態が養豚場の跡地であってもイメージを考えて湘南キャンパスと名づけるK大の経営陣との経営センスの差は歴然としている。さらに投資銀行時代に採用活動に関わった際に感じたのは、K大の学生の方が実践的な知識やスキルを身につけていて採用したくなるということだ。また、記事でも語られている同窓生同士が協力し合うのもK大の魅力だろう。W大の者はよくK大の人たちを指して「すぐにつるむ」とあたかもそれが好ましからざることのようにいったりするが、学生同士、OB同士が協力し合って何ら悪いことはなく、お互い協力し合うことこそ日本人の美徳だろう。私もたまにはW大のOBの集まりに参加することがあるが、同年代の同窓生とは「子どもを入れるならWではなくKだよね。」という話をしている。自分が通った大学の価値が下がるのを見るのは実に寂しく、嘆かわしいことだが、付属校まで増設して肥大化してしまったW大が再びK大のライバルに値する大学になる道筋は見えない…。

2014年11月15日土曜日

昭和町

久しぶりの福山。今回は府中の企業を訪問するための前泊だったが、現地のお付き合い先にお誘いを受け、夜一緒に食事をさせて頂いた。駅近くの居酒屋で地元料理に舌鼓をうった後、二次会で飲み屋街昭和町のスナックに連れて行って頂いたが、そこは絨毯敷きの広々とした快適な空間だった。人と会食する機会も少ないので、たまにこうした機会があると楽しくなってついついウィスキーや焼酎をひたすらストレートで飲み続けてしまう。今回もそのパターンで、タクシーでホテルに戻り、エレベーターに乗る前まで覚えていたが、その後の記憶がなかった。ところが、翌朝目覚めると背広はきちんとハンガーに吊るしてあり、コンタクトレンズも外してちゃんとしまわれていた。記憶がないなりにきちんと行動している自分に感心するとともに、人といる間は一定の緊張感を保ち、記憶をとぎらせなかったことに一抹の安心感を覚えた。

2014年11月9日日曜日

原発

最近のニュースで原発事故の避難訓練だの、30キロ圏内の自治体云々と聞いて違和感を覚える。原発を推進し始めた当初は絶対安全といっていたことがすっかり忘れ去られてしまったようだ。原発事故が起きる確率は「地球に巨大隕石が衝突する確率と同じくらい」といっていた御用学者に再び表に出てきて弁明してもらいたいものだ。こうした大前提が変わってしまってもなお、原発を続けるというロジックがよくわからない。原発の経済性の主張も再び事故が起きないという前提に立ってのことであり、そうであれば避難訓練など必要ないはずだろう。島根原発がある松江の知人が原発は麻薬のようなものといっていた。補助金に依存しないと生きていかれなくなり、一度やってしまうともうやめられない麻薬と同じだというのだ。今回の川内原発の再稼働へ向けた地元自治体の動きを見てなるほどと納得した。

2014年11月1日土曜日

因果応報

同じW大のOBということでお招きを受けた野田前総理の講演。消費増税や尖閣諸島の国営化を決断するに至った背景、TPPをめぐるオバマ大統領との初会談の際に彼の心をとらえるためにやったこと等の裏話が聞かれたが、選挙公約を守らず、早々に政権を失った点についての総括はなく、国会に戻らなければならないとのことで質疑応答なしに終わった。そんな氏が所信表明演説を行った際にやはりW大出身の自分の父親と比較して侮辱した自民党の女性二世議員が経済産業大臣に任命され、“女性初の総理候補”などともてはやされていたので、それについてどう思うか聞きたいところであったが、父親から地盤を引き継いだだけで野田氏のような苦労もしていないであろう彼女がその後父親から引き継いだ支援団体のあからさまな利益供与が原因で辞任に追い込まれる様を見て「因果応報」という言葉が頭をよぎった。