2012年12月29日土曜日

ダニエル・イノウエ

米国議会で最古参の上院議員ダニエル・イノウエ氏が死去した。イノウエ氏について知ったのは高校時代に交換留学で米国にいたときのこと。戦時中に敵国人として差別を受けていた日系2世の(当時の)若者たちが米国への忠誠を示すために軍に志願し、ヨーロッパでもっとも危険な戦地に送られた。この第422連隊に所属し、戦闘で右腕を失ったイノウエ氏は私が留学していた当時の日系人の若者(今ではいいおじさん、おばさんになっているだろう)の英雄で、その後カリフォルニアの州議会でインターンをやっていたときには日系人のスタッフのオフィスにイノウエ氏と一緒に撮った写真が飾られていた。日系人も私の世代は3世か4世で親や祖父母の世代に比べてパッとしないと(本人たちが)いう。それも裏を返せば差別が減り、ふつうに頑張ればよくなったからかもしれない。イノウエ氏の葬儀は元首級の扱いだったと聞くが、日系人初の上院議員となって半世紀勤め上げたイノウエ氏が米国の政治史に名を残すことは間違いないだろう。

2012年12月22日土曜日

韓国

久しぶりの韓国。釜山の空港はいつの間にかターミナルビルが建て替わり、町も高層ビルが立ち並んでいて、大学時代に来たときとはすっかり様変わりしていた。しかし変わっていたのは町の景色だけではない。空港から乗った韓国製のハイヤーは日本のそれをしのぐ快適さで、訪問先の財閥系企業が開発している製品は新規参入でありながら日本の同業の先を行く性能。日本企業がその地位を脅かされているのは電機業界だけではないようだ。今回訪問した韓国南部の地方都市はかつての日本の企業城下町を彷彿とさせる賑わいで、訪問先の企業には日本の同業を退職して移ってきた日本人もいた。同国は英語教育に力を入れていると聞いてはいたが、訪問した企業はTOEICで高得点をとらないと採用されないとかで、エンジニア職を含めて皆英語が流暢。久しぶりに乗った大韓航空も客室乗務員の英語力が格段に上がっていて、機内サービスを含めて日系の航空会社とはずいぶんと差がついてしまった。財閥支配による富の集中がいいとは思わないが、官民双方の合理的思考と意思決定のスピードは国際競争力をもつ上で欠かせない。最高学府を出た人たちが国の経済成長に関わる政策をリードしている点では日本も韓国やシンガポールと同じはず。それがなぜ“シロアリ官僚”などと揶揄される情けないことになってしまっているのか。また、政治主導でこうした状況を脱し、凋落に歯止めをかけられるのか。考えさせられる訪問となった。

2012年12月15日土曜日

国民的議論

選挙のときなどに政治家がよく使うこの言葉。もっともらしい響きだが、中国との“戦略的互恵関係”と同じくらい空疎に思える。政治家は政治をやるために国民から選ばれ、日本の場合、それを生業としている専業のプロのはず。従って一般の国民より多くの情報にアクセスがあり、知識も見識ももっていなければ困る。それが自ら判断することを避けて国民の議論に委ねるというのはいかがなものだろうか。今回の選挙でもセンシティブな争点についてこの言葉を持ち出して態度を明らかにしない政党があったが、つまるところははっきりしたスタンスもビジョンもないことの表れと理解した。それにしてもマスコミの選挙報道とは裏腹に、今回の選挙ほど結果が見えていて盛り上がらない選挙も珍しい気がする。現政権党は公約違反以外でも党首や閣僚選びに始まり、今回の選挙戦でのいわゆる“第三極”攻撃に至るまで、見事なまでのミスジャッジを繰り返し、想像しうる最短の期間で国民の信頼を失った。前政権党の負の遺産を引き継いだことや、いいこともやったことを差し引いても、あまりにお粗末。一度国民の支持を失った人がまた総理大臣になりそうな勢いだが、一度国民の信頼を失った政党が再び政権の座に返り咲くことはあるのだろうか。

2012年12月9日日曜日

総選挙

今回の総選挙では前回の選挙で国の無駄遣いをなくすことを公約しながらそれが十分に果たせていない現与党の大敗が予想されているが、こうした選挙を実施するために使われるお金にも無駄があるように思う。投票を呼びかけるポスターやCMだ。投票権は有権者の権利であり、その権利を行使するも放棄するも勝手なはず。積極的に権利行使をしてきた私でさえ、投票したい候補者がいなくて放棄したくなるときもある。それをなぜ国税でアイドル歌手を使ったポスターなど作るのか。若者の投票率を上げるためともっともらしい理由も聞かれるが、アイドル歌手のポスターを見て投票に行く気になった人がいたとして、その人の一票が熟考に熟考を重ねて一票を投じている人と同じ重みをもつというのはどんなものだろうか。また、こうしたPR活動が実際に投票率を上げているか検証されているのかも疑問。ただ政治家は立場上、投票率を上げるという目的には反対しづらいので、こうしたところにはなかなかメスが入らない気もする。

2012年12月1日土曜日

和栗のモンブラン

事務所近くのカフェが掲げる『銀座でいちばん美味しい和栗のモンブラン』の看板。通りがかるたびに「何を基準に“銀座一”を名乗る。そもそもここは赤坂だろう。」などと思っていたが、先日友人と昼食を食べた後に行ってみるとこれが実に美味。しかも一緒に注文したコーヒーがまた美味しかった(昼食代よりも高い1000円超えの値段にも驚いたが)。女性が一人でラーメン屋や牛丼屋に入りにくいというのと同じように、男が一人でスイーツを食べに行くのは気が引けるものと思っていたが、まわりを見回すと店の客の半分以上が背広姿のおじさんたち。自分もその中に十分に溶け込んでいると自覚しながら、「竹内さんも一人で来ても大丈夫ですよ」といわれてちょっと複雑だった…。