2015年7月25日土曜日

チャレンジ

投資銀行時代、不正経理問題で話題の総合電機大手のT社には何度か伺ったことがある。会う相手の地位により、通されるのが応接室だったりオープンな会議スペースだったりしたが、後者ではベテラン風の女性が喫茶店のウェイトレスのごとく手慣れた手つきでお客に飲み物をふるまう様が印象に残っている。同社では「チャレンジ」と称して事業部門が利益のかさ上げを迫られていたと報じられているが、私がいた電機メーカーの事業部門ではその呼び名が「気合い」だった。もちろん根拠のない数字なのでそのような抽象的な呼び名がつく。また、報道で聞かれる「必達目標」という言葉の響きも懐かしいくらい、よく似たことが行われていた。ただ、T社との違いはインフラ系の事業をやっていなかっただけに、費用の計上を遅らせるなどの不正がやりづらく、営業利益をよく見せるために、上客の要請に素直に従う監査法人の「理解」のもと、営業外扱いだった収入を営業利益に含めたりというのがせいぜいだった。しかしこんな小手先のことをやってもいずれはつじつま合わせをしなければならなくなり、後の世代に負担を残すだけだ。社長の体面を守るために、こうしたことに手を染めさせられる社員は実に気の毒だと思う。