2010年6月26日土曜日

役員報酬

今年から東証に上場している企業に義務づけられた高額な役員報酬の開示。株主への情報開示を積極的に進めているかのようなポーズをとりながら役員報酬だけは頑なに公表を拒んできた企業ほど高額な報酬を払っていたことが明らかになって面白い。

それにしても一時期もてはやされた大手自動車メーカーの外国人社長の“お手盛り”ぶりには驚く。かつて自らが社外役員を務める企業のトップに経営目標を達成できない場合には引責すべしといっていたやに聞くが、その後自らが経営目標を達成できなかったときには引責することもなく平然と高額報酬を受け取り続けていたというのか。グローバルスタンダードというが営業利益率4%というのはとうていグローバルスタンダードのレベルではないし、5倍の当期利益をあげているトップメーカーの社長の8倍以上の報酬というのはいかがなものか。

私が元いた電機メーカーの外国人幹部に対する大盤振る舞いぶりも相変わらずのようだ。優秀な経営者を雇うにはお金がかかるというが、0.5%にも満たない営業利益率しかあげられず、2期連続最終赤字の状況では説得力に欠ける。「株主にもきっとご理解頂ける」のであればなぜこれまで自発的に公表してこなかったのか…。

投資銀行時代に出入りしていた大手総合電機メーカーでは業績給の比重が大きい社長の年収が部長クラスよりも低いという話を聞いた。今回高額報酬が明らかになった企業の中にはストックオプションで高い年俸にさらに上積みしているところがあったが、株価の値上がりで莫大な収入を得られるようにするのであれば、もともとの年俸の水準は抑えるべきであろう。

当時勤めていた投資銀行の幹部はストックオプションというダウンサイドがない制度自体が問題で、経営トップはオプションではなく株そのもので報酬を受け取るべきといっていた。つまりその時の株価をベースに年俸相当分の株式を受け取り、株価が上がったときには売却益を享受し、下がったときには一般の株主と痛みを分かち合うというのだ。業績に関わらずお手盛りし放題の一部企業の実態が明らかになると頷かざるをえない。

2010年6月20日日曜日

名古屋飯


地元出身者でも見どころはないと断言する名古屋なのでたまに行ったときにも観光はせずに地元の料理を食べて帰るようにしている。名古屋グルメといってすぐに思いつくのは味噌カツと味噌煮込みうどんだが、東京で育った私には前者はどうしても理解できない。トンカツによく合うウスターソースなるものがあるのになぜあえて味噌をかけるのか。このあたりは八丁味噌を食べて育った地元の人たちにしかわからないのかもしれない。

ということで今回も味噌煮込みうどんを食べることにしたが、飛騨牛のこともあったので以前二度ほど行った有名店ではなく、地元の人に支持されている店を探すことにした。この有名店は名駅に隣接した地下街という便利な立地もあって外来の客の定番となっているが、ほかの店に比べて特においしいわけでもないのに値段だけはやたらと高い。名古屋コーチン入り味噌煮込みうどんが2300円などというのはもはやうどんの値段ではない。店の内装は洒落ていて汁が衣服につかないように紙の前掛けがついてくるのも気が利いているが、それにしても高すぎる。

パソコンで色々なキーワードで検索していくうちに、何とこの有名店と同じ地下街で、しかもすぐ裏手にあるうどん屋が地元で人気と知った。さっそく行ってみると店頭に置かれたメニューの中に味噌煮込みうどんがあったが、それが目当ての観光客に来てもらいたくないからか、あるいは近隣の有名店に気を使ってか、数ある品目の一つという扱いで、注意しなければ見落としてしまいそうだった。中に入ると夕方の時間帯だけあって広々とした店内は仕事帰りのサラリーマンで賑わっていた。まわりを見回すと一品料理をつまみに酒を飲んでいる人ばかりで、こんな居酒屋のような店で本当においしい味噌煮込みうどんが食べられるのだろうかと思った。

注文してからしばらくして運ばれて来た味噌煮込みうどんは一見何の変哲もないものだったが、スープはもとより絶妙のゆで加減の麺が歯ごたえがあって実においしかった。これで900円というからやはり地元の人の目は確かだ。特定の店が実力以上の評価を受けて質と価格にギャップが生まれてしまうのは“有名店”だの“専門店”だのといったことばに惑わされる人が多いからだろう。旅先でおいしいものにありつくには味と値ごろ感を知る地元の人たちが行く店を探し出すに限る。

2010年6月12日土曜日

ワールドカップ

今一つ盛り上がりが感じられない今回のワールドカップ。日本チームが弱すぎというのがその理由だろうが、逆にこれだけ期待が低いと選手にプレッシャーがかからなくていいのではないかと思う。オランダには逆立ちしても勝てないだろうが、カメルーン戦とデンマーク戦はうまくいけば勝つか引き分けに持ち込むことができるのではないだろうか。

いつもは視聴者の期待を煽りまくり、前回もブラジル戦しか残っていないのにまだ望みがあるかのように報じていた本邦のテレビ局も今回はさすがにおとなしめだ。最近は放映権をもつ局が日本以外のチームやプレイヤーについてさかんに取り上げているのが伏線を敷いているようで面白い。世界のトッププレイヤーの技と動きはJリーグの試合が緩慢に見えてしまうくらいだと聞くが、今回はそれを見るいい機会であるのは間違いない。

以前も書いたが今回のワールドカップは盛り上がらない方がいい部分もあるように思う。昨年の暮れに南アフリカを訪れて、一目で外国人とわかる日本人サポーターが行くのは危険と実感したからだ。また、8年前の日韓ワールドカップで静岡で行われたイングランド対ブラジルという夢の対戦を見たが、スタジアムで豆粒のような選手を見るよりは自宅のテレビで観戦する方がよほど何が起きているのかわかりやすくていいと思う。(もちろんファンの心理としては実際に行って声援を送りたいのだろうが。)

オランダには間違っても勝てないとなると初戦のカメルーン戦に負けた時点で残りは実質的に消化試合になってしまう。今回のワールドカップの最悪のシナリオは日本が全敗することではなく、日本をはじめとするアジア勢が不甲斐ない成績に終わって次回のアジア枠が減らされてしまうことのように思える。今回はアフリカ大陸の、それもオランダ系移民が多い南アフリカでの開催なのでカメルーン戦もオランダ戦も実質アウェイのようになると思うが、期待の低さを逆手にとって伸び伸びとやってもらえればいいのではないだろうか。

2010年6月6日日曜日

新総理

今から20年余り前、当時通っていた都の西北の大学に菅直人氏がやって来た。革新系の議員として名前が知れ始めていた頃のことだが、大隈講堂の前の方に座って話を聞いていたはずが、その内容も、その後に行われた質疑応答の内容もまったく思い出せない。もっといえば政治家の講演会にそれほど興味があったわけでもない私がなぜこのとき足を運んだのかも思い出せない。当時社会民主連合で菅氏と政治活動をともにしていたゼミの先輩の故久和ひとみさんの関係だったかも知れない。

思い出せることといえばライトに照らされる壇上に座る菅氏の姿と、東京工業大学を出ていながらなぜまっとうに?エンジニアの道を進まずに好き好んで政治の世界などに入ったのだろうと思ったことくらいだ。そして国会議員4人しかいない革新系のミニ政党に所属するこの人物が総理大臣になる日が来ようなどとは夢にも思わなかった。何せ当時政治学の権威であった私のゼミの教授をして、想像しうる将来自民党が政権の座を降りることはないだろうといわれていた時代だった。

BBCでは3年で5人目、CNNでは2006年以降5人目の日本の首相と報じられ、国内の評論家も首相が代わりすぎるのはよくないといった論調が目立つ。確かに外交上マイナスな面はあろうが、国民が「失敗した!」と思っても任期中は代えられない国と比べてどちらがいいだろうか。それよりは前政権が対外的に約束したことを反故にしないことの方が外交的に信用を保つのに重要だろう。

市民運動出身としては初、世襲以外の首相も久しぶり、私の隣の選挙区だがいつも余裕で当選していたわけでもなく、野党時代が長かったのでずいぶん苦労もしているはず。浮世離れしている感じもなく、プラグマティックな考え方ができそうにも思える。首相の座を虎視眈々と狙い、実現したらやりたいことが色々あったやに聞くが、果たしてどれだけ政権を持続させ、それを実行することができるだろうか。