2015年11月28日土曜日

企業体質

不正会計問題が発覚した後、零細株主である私にさえ何度も送られてきたお詫び、そして体制刷新の通知。こんなものを書面で何度も全株主に送っていたら、それこそ費用もばかにならないだろうと思うと同時に、信頼を回復したいという新しい経営陣の必死さが伝わった。「そこまでやるなら本気かもしれない」と思いかけてきた矢先に流れた歴代社長提訴のニュース。その損害賠償額が歴代社長3人と、元最高財務責任者(CFO)の2人に対して合計で3億円という大甘ぶりと聞き、これまで書面で言ってきたことが全て説得力を失った。(ならばそんな無駄な金をかけて株主一人一人に何度も手紙など出さないでほしかった。)しかも、株主から歴代経営陣28人に総額10憶円の損害賠償訴訟を起こすよう請求され、60日以内に提訴に踏み切らない場合、株主が「株主代表訴訟」を起こすことが可能になっていたというから、厭々やっていたことが想像される。先輩への気遣いなのか、自分が同じことをしたときの保険なのかはわからないが、やはり企業体質は変わらないことを認識させられた。

2015年11月22日日曜日

酸化防止剤

近所のスーパーで売っていた酸化防止剤無添加のワイン。『酸化防止剤無添加』を謳うということは、その物質が体に悪いことを示唆しているが、ワイン好きとして知られた芸能人が胆管がんで亡くなり、晩酌に毎晩ワインを飲んでいた近所の女性も同じがんで亡くなった。生物学が専門の友人に聞いたところ、因果関係を立証するのは難しいが可能性は十分にあるとのこと。酸化防止剤は亜硫酸ナトリウムという物質で、酸化防止の他、変色防止、防かびなどの効果もあり、好ましくない色素物質を打消してきれいで鮮明な色調に整える目的でも使用されるそうだ。要は消費者の健康よりも商品の見栄えを気にしているということか。しかし、私は別の理由で酸化防止剤入りのワインを避けるようにしている。酸化防止剤入りのワインは独特のケミカルっぽい後味が残るからだ。アメリカ第2のワインの産地であるワシントン州から取り寄せているワインにはもちろんそのようなものは入っておらず、変な後味もしない。出張先の長野で、駅の構内で県産ワインが飲めると聞き、行ってみたが、どれもこれも酸化防止剤を添加していてがっかり。抗酸化物質のポリフェノールが多く含まれていて、心臓病の予防にいいと言われるワインだが、このようなグレーな物資を入れてしまった時点で飲むのは考えものだ。

2015年11月15日日曜日

独裁経営

来日したドイツの建設機器メーカーの社長。1964年に共産主義を逃れてアメリカに渡ったブルガリア人で、米系大手の建設会社の幹部にまでなった異色の人物だ。引退後に長年赤字が続いていたドイツの老舗建機メーカーを買収して立て直し、日本のメーカーの買収にも意欲を示している。米系大手在席中から数多くの買収を行ってきたが、全て欧米の企業。日本が好きだと聞いた時には、私に対するリップサービスもあるのではないかと思ったが、実際に会って話してみると、ビジネスマンとしての合理的な発想があることを知り、納得した。彼は長年世界中をまたにかけてビジネスをやって来た経験から、様々な国の国民性をよくわかっていて、世界中でドイツ人と日本人しか持ち合わせていない資質が3つあるといった。それは規律と品質へのこだわり、そして誠実さということだった。また、いくつもの会社を立て直してきた経験から行っていることがあるという。それは会社を買収した際には、給料が高い順に7名を問答無用で解雇するとともに、誰よりも早くから出勤して製造の現場に立ち、現場、そして現場で働く人を重視する姿勢を身をもって示すというものだ。高給を取っている幹部は現場とは一番遠いところにいて、赤字を招いた責任者であるということなのだろう。中には顔を合わせることなく解雇を通知する相手もいるそうで、本人から会いたいと言われると、「あなたのことを好きになってしまうかも知れないので、それはできない。」と断るのだそうだ。遠く離れた日本の企業を買収してどうやって経営するのかと尋ねると、彼は経営を任せられる人を常に社内で見つけるのだという。確かに今や彼自身がドイツにいることは少なく、会社の経営を実質的に任されているのはまだ30代の生え抜きの社員だ。何でも彼が会社を買収した後、早くから出社して彼がやることをじっと観察していたそうだ。彼が言っていたことでもう一つ興味深かったのが、独裁者であることの重要性だった。確かに合議制の大企業は意思決定が遅く、責任の所在が曖昧になりがちなため、経営環境が変わっても対応が遅れがちだ。彼は故スティーブ・ジョブズ氏を引き合いに出して、彼は大変な嫌われ者だったが、彼の独裁なくしてアップルの成功はなかったといった。彼の実体験に根差した話は興味深く、私もかねてより独裁者が悪いとは思っていなかったが、その独裁者が彼のように判断力がある人でないと、会社はより不幸な状況になってしまうだろう。

2015年11月7日土曜日

クレイマー

テレビでネットの書き込みに過剰反応する企業や個人に疑問を呈する番組を見た。昆虫を怖がる子供がいるという理由で学習ノートの表紙の写真を変えるのと、県産ブランド米のイメージガールの応募条件から色白というのを撤回するのは全く異質のもので、それを同義に語るのはいかがなものかと思ったが、色々なことを批判する人たちにいちいち反応するのはおかしいという番組の趣旨には共感した。そもそも匿名でネットに書き込みをして不満を述べたり批判したりするのは一部の人たちであって、その人たちの言っていることは世の大半の人の意見を反映したものですらない。ただ、この番組を放送した公共放送自身の報道のし方にも問題を感じる。例えば「被災地のがれきの受け入れを決めた市役所に市民からの電話が殺到し、その殆どが反対の声だった」などと言うが、わざわざ市役所に電話をかけるようなヒステリックな人たちは反対に決まっていて、市民全体の意見を反映しているわけではない。一方、この番組を見て不可解だったのが、先の学習ノートのメーカーの担当者が昆虫の写真の使用を止めるのは苦渋の決断だったと言っていたことだ。それを嫌がる子供が多いのであれば、やめるのは企業としてごく当たり前の経営判断であり、そうでないなら昆虫の写真を続ければいい。苦渋の決断をしなければならない理由は見当たらない。