2017年4月29日土曜日

復興大臣

記者に対する暴言の後、「東北でよかった」発言で辞任した復興大臣。どこの選挙区の人かと思ったら九州だった。発言(表現)自体もさることながら、記者に対して居丈高に接する一方で、総理から苦言を呈されると速攻で謝罪する態度の違いに本人の人間性が垣間見える。サラリーマン時代に「強きを助け弱気をくじく」と評される上司がいたが、上に対しては卑屈なまでにぺこぺこする人ほど部下に対してつらく当たるという相関関係があることに気付いた。上に卑屈になる分、下に当ることで精神的なバランスをとろうとしているものと想像したが、上にも下にももっとふつうに接していれば周囲に嫌われずにすんでいただろう。ただ、当時勤めていた会社にはあからさまなご機嫌取りに弱い経営幹部がいたし、360度の人事評価など存在しなかったので、彼らのそうした行動もどんなに下に嫌われても自らの処遇に影響力をもつ上に気に入られるための処世術だったと見ることができる。当時の経営判断の誤りの多くもこうした社内の体質から来ていたように感じる。

2017年4月21日金曜日

中国

大学のOBの集まりで講演を行った石平先生の話は中国の人たちの考え方を知る上で興味深かった。彼の国に行くとあらゆる物のスケールの大きさに驚くが、人々が考える時間のスパンも我々日本人よりはるかに長く、戦前・戦中などごく最近のことのようだ。アヘン戦争以降の100年間を「屈辱の歴史」とし、それを清算して民族の復興(「華夷秩序」の回復)を果たし、再びアジアの頂点に立つのが目標で、何世紀にも亘って進んだ文化を教えてあげたのに西欧列強に追随してひどいことをした日本人は許せないのだという。戦時中大陸にいた祖父が日本兵の隊列を見て「東洋鬼」(トンヤンクイ)といった子供の口を親が慌ててふさいだという話を思い出した。さらに明治以降の日本はかつて進貢国だった琉球(沖縄県)を取り込み、韓国を併合して中国の影響から切り離したので余計面白くないらしい。南シナ海を軍事支配さえすればアジア各国は中国の軍門に下るしかなくなるため、アジアの頂点に立つためには今後も島の軍事拠点化は続けるとのこと。日本人は「国際協調」といった言葉を好むが、国際政治は力の論理というのが中国の理屈で、それを中国に教えたのはほかでもない西欧列強や日本だといわれると反論しづらい。また、中国の庇護のもとに暮らすのがアジア諸国民の幸せという考え方は韓国を併合した時代の日本の考え方に共通するところもあり、日本が「いい子」ぶりづらいところだ。中国によるアジア支配の最大の障害がアメリカの存在と影響力、そして日米同盟とのこと。米軍基地がある沖縄で“色々と”工作を行っているだけでなく、北京で琉球独立を主張する学者を集めた会議までやっているというから驚く。一方、アメリカにとっても太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争と、世界中でもっとも多くの血を流してきたアジアの重要性は変わらず、世界の他の地域から手を引いてもアジアから引くことはないため、今後は世界のどこよりもアジアで紛争が起きる確率が高いというのが先生の見立てだった。

2017年4月15日土曜日

ロゴ

イトーヨーカ堂が店舗の看板に使っているセブン&アイ・ホールディングスの共通マークをやめて昔懐かしい「ハトのマーク」を復活させるという。1972年から使い、買い物客になじみのあったマークに戻してブランド力の強化を図るそうだが、そもそもなぜセブン&アイのセンスのないマークに変えたのかがよくわからない。同じグループ企業とはいえ、スーパーとコンビニは競合こそすれ、ブランディングの面でシナジーはなかろう。そもそもセブンイレブンの見慣れたロゴをiの文字が入ったへんちくりんなロゴに変えた時点でそのセンスを疑っていた。日本航空も大々的なセレモニーまでやってなくした鶴丸のロゴを復活させた。これもきわめてまともな経営判断だったと思う。おそらくはCI(コーポレート・アイデンティティ)などというバズワードを使うコンサル会社か広告代理店にそそのかされて変えてしまったのだろうが、消費者が慣れ親しんでポジティブなイメージを抱いているロゴはB-to-C企業にとって無形の資産であり、それをなくしてしまうのは損失でしかない。ロゴを変えるのは加ト吉(現テーブルマーク)のように不祥事を起こしてイメージを変えたいときにだけにした方がいいだろう。

2017年4月8日土曜日

東芝

証券会社時代同社を担当していた私は企業体質を知らなかったわけではない。ではなぜ退社した後にN証券の人に勧められるままに同社の株を買ってしまったのか。(N証券の体質を知らないわけでもなかった。)ただ、ウェスティングハウスの買収は株を買った後に起き、不正会計問題など予見できなかった。3000億円で買ったブラジルのビール会社を770億円でハイネケンに売却したキリンビールといい、シェールガスで同じく数千億円単位の減損損失を出した日本の大手商社といい、日本企業の高値掴みのババ引きは相変わらずのようだ。そもそもそれほど魅力的な投資対象がアメリカやブラジルにあれば、日本企業より動きが速い欧米の企業がとっくに手をつけているだろう。それをやらなかったのは投資額に見合うリターンが見込めなかったからだ(エネルギー業界の関係者によると欧米の企業は原油価格の下落をとっくの昔に予想していたそうだ)。売れ残りを高く買い、それを適正価格で欧米の企業に売り渡すはめになるおめでたい日本企業だが、気の毒なのはそこで働いている社員たちだ。特にメーカーは一生懸命開発した商品を厳しい競争の中で売ってコツコツと稼ぐわけだが、愚かな経営判断で全社員の何年分もの稼ぎが一夜にして失われたら、どれだけやる気を失うことだろう。

2017年4月1日土曜日

老け役

「あさが来た」が終わってから毎朝NHKの朝ドラを見ることもなくなったが、今週終わったドラマは人気があったようだ。ただ、ストーリーをフォローしていない私がたまに目にすると、若い俳優たちの「老け役」に違和感を感じてしまうばかりだった。髪の毛を白髪にしても肌つやの若さは隠せず、嘘っぽくなるのはしかたないにしても、年寄りっぽい動きや歩き方がどうしてもわざとらしく見えてしまうのだ。NHKの大河ドラマで40過ぎの元トレンディ女優が娘役を演じたときは驚いたが、少なくともベテラン女優は娘時代を経験しているので、昔を思い出してそれらしい演技はできるかもしれない。方や若い俳優は歳をとった経験がないので、想像で演じるしかない。とはいえ年齢によって別の俳優が演じると、それはそれで嘘っぽくなるので、人の人生を扱うドラマは難しい。