2017年10月28日土曜日

慢心

先の総選挙の結果は日本人の国民性を理解していることの大切さをよく表していたと思う。「今なら勝てるから」という本音が見え見えで、任期満了までまだ1年以上あるのに「国難突破」などどわけのわからない理由をつけて国会の冒頭に解散してもそのまま許されてしまい、一方で「排除」だの「さらさらない」など、多くの日本人が「あなたいったい何様?」と思う言葉を使った側が案の定大敗した。世論が移ろいやすいこともわかっていなかったのだろう。島国日本の国民は概して「国際派」が好きではないのでやたら横文字を使うのもプラスには働かない。日本人が大好きなのは「安心」「安全」といった言葉で、ありもしない(あるいは現実にはどうすることもできない)危機をことさら煽って票を稼ぐのはあるべき手法ではないが、しっかりと効果をあげてしまう。また、インフレ目標の未達など、都合の悪いことは説明を避け、いいことは自分の手柄、悪いことは野党のせいといった手法も本来日本人の美意識に反するものだが、「言った者勝ち」で躊躇せずやる側が得をしてしまう。財政的な裏付けもなく子育て支援を唱えるポピュリストぶりも無責任なことではあるが、自分の子どもの世代にかかる負担まで考えずに賛同する母親が多いことも計算済みのことだろう。圧勝といいながら全体の3割しか得票していない与党がさっそく「(民意を表す得票率ではなく)議席数に応じた質問時間の配分」などといい出しており、行政への監視もますます弱まりそうだ。自らの野心のために野党を大敗させた都知事の責任は果てしなく重い。

2017年10月21日土曜日

東京湾「領土問題」

東京湾の中央防波堤内側埋立地の帰属をめぐる江東区と大田区との「領土問題」は傍観者的には実に面白い。当初は港区、中央区と品川区も帰属を主張していたそうだが、今は「埋め立ての為に渋滞や騒音に耐えてきた」とする江東区と、「地元の漁業組合が養殖の漁業権を持っていたのを放棄した」と主張する大田区にしぼられたそうだ。しかし徒歩ではアクセスできず、倉庫と公園になるだけの土地をなぜそれほどほしがるのか。両区が「タダでもらえる」からそのような主張をしているのだとしたら、埋め立てにかかった費用を負担させてはどうかと思う。そうすれば両区とも主張を撤回するかもしれない。いずれにしても目の前の海が埋め立てられることで「領土」が広がるというのは内陸区にはない話で、うらやましい気もする。

2017年10月14日土曜日

選挙報道

地上波しか契約していない私にとっては衆議院選挙のニュースでテレビの放送時間をとられるのは実に迷惑。低投票率で与党が勝利することが確実なのに事前にあれこれ論じたり、開票日に多大な時間を割いて開票速報をやる意味などあるのだろうか。せめて通常の番組の枠を奪わないでほしい。大多数の国民は現政権になってから財政赤字が160兆円増えていることも知らず、単純に景気が浮揚していると思っている。(そつツケを払うことになる若い世代の支持率が高いというからしかたがないか。)また、北朝鮮問題では韓国の大統領が嘲笑気味に語るほど日本国民の危機感を煽るのにも成功している。さらに鳴り物入りで出て来た新党は、このままだと日本が衰退の道を辿ってしまうという問題意識は正しいが、特に地方では「しがらみ」で食べている人が多く、そうした人たちこそ投票に行くので、真っ当な訴えも響かない。さらに多くの候補者の印象が悪く(私見)、結局野党を分裂させて与党を利しているだけ。つまり与党が負ける要素は見当たらないのだ。一方、現政権が役人のみならず、検察・警察までも意のままに操るようになった結果、あからさまな証拠隠滅が行われた政治資金規正法違反事件で元経済産業相が不起訴処分になった上、何事もなかったかのように要職に復帰し、いわゆる学園問題では国有地の大幅値引きという問題の本質とは異なる補助金の不正受給で起訴が行われた。さらに、国会で後で虚偽とわかる証言を行った財務省の官僚が国税庁の長官に昇進し、物的証拠も証言もそろっていてレイプ事件で逮捕寸前だった首相の御用記者と呼ばれる民放出身の人物が官房長官の子飼いといわれる警視庁の刑事部長の介入で不起訴処分になってしまうのだから、もはやまともな法治国家、民主国家とはいえない。日本がここまで成り下がってしまったことを嘆かわしく思う私としては、結果がわかっている選挙の報道で我が国の将来を憂うよりは、お笑い番組でも見て気を紛らした方がよほど精神衛生上いいのだ。

2017年10月7日土曜日

誇大広告

最近テレビで世界中の200社以上のホテル予約サイトから宿泊施設の料金を比較できるとしきりに宣伝している検索サイト。いつも利用しているホテル予約サイトと比較してみたが、出ていないホテルが多いだけでなく、最安値と表示される料金が高かったりする。こうした誇大(というより虚偽)広告はあってはならないが、ウェブの情報は常に更新され、素人には証拠を残すのが難しい。それをわかった上での「確信犯」だろうか。私が複数のホテル予約サイトの料金を比べたいときに使っているのはトリップアドバイザーで、そこで表示される最安値をいつも利用しているサイトやその宿泊施設の公式サイトを比較し、大差がなければ後者で予約を入れるようにしている。というのも最近トリップアドバイザーである特定の宿泊予約サイトばかりが最安値で表示されるようになったのだが、実際には競合の宿泊予約サイトやそのホテルの公式サイトで同等の値段が出ていることが多い。その会社と何らかの協定を結んだのか、はたまたその会社がトリップアドバイザーのシステムを把握して自社の料金が最安値で表示されるように工夫しているのか。ホテルの予約にあまり時間をかけたくない一方で、あえて高い料金は払いたくない。その結果たどり着いた手法だ。

2017年10月1日日曜日

栄枯盛衰

少し前にイギリスのケンブリッジ大学が中国当局からの要求に従ってウェブサイトに掲載されている天安門事件など中国関連の論文について、中国からの接続を遮断したというニュースを目にした。中国の監督当局からの要求に従わなければ、中国での業務全般に悪影響が出ると警告されたとか。同大は中国での子ども向け英語教材の販売が好調だというから純粋にビジネス上の判断なのだろうが、中国の言論統制が海外にまで及んできたことを象徴する出来事だった。ここまでは大学とはいえ、民間の一営利企業の話ともいえるが、中国ナンバー2の訪英でも女王が出迎え、人権問題の「じ」の字もいわなくなったイギリス政府の中国に対するすり寄り方も露骨なものがあり、この数十年の間に完全に立場が逆転したことを表している。とはいえ、イギリスは同じ島国でも日本に比べてよほど世界情勢に明るい人たちが政治を司っている計算高い国。我が国は彼らが取っている行動の背景を理解し、その上で自国の戦略を考えるべきだろう。