2011年6月25日土曜日

R. マキロイ

北アイルランドにいずれ世界の4大メジャートーナメントで優勝するであろうゴルフの逸材がいると当地のクライアントから聞かされたのはもう2年以上前のことだっただろうか。日本では石川遼君がメディアの注目を一身に浴び始めていたためタイガー・ウッズ以外の外国の選手が報じられることはほとんどなく、マスターズ優勝が確実視されるほど秀でたゴルファーが本当にいるのだろうかと半信半疑で聞いていたことを思い出す。しかしこのゴルファーこそ先週全米オープン選手権で圧勝したロリー・マキロイで、地元の評は決して客観性を欠いたものではなかった。

北アイルランドは面積が福島県ほど、人口は鹿児島県ほどの小さな地域で日本での認知度はきわめて低い。イギリスの一部であるため日本ではスコットランドやウェールズと同様、イングランドとひと括りにされてしまう。サッカーではもちろんイングランドと区別されるが、いかんせん北アイルランドのチームはすこぶる弱いのでワールドカップに出てくることがなく、日本での知名度は上がらない。人口170万人余りの地域ではいたしかたないことか。ただゴルフについていえば昨年の全米オープンの覇者もグレアム・マクドウェルという当地出身のゴルファーで、この大会で同じ国(地域)の人が2年連続で優勝するのはアメリカ以外では初めてというから大したものだ。

今週北アイルランドから来日したクライアントがマキロイのクラスメートの父親ということもあって、企業を訪問した際にはその話題でもちきりだった。中には現地に視察に行ったら本人に会わせてもらえるかと無茶をいう人もいて、クライアントはマキロイの父親なら会わせることができるかもしれないといってその場をしのいだ。マキロイはベルファスト近郊のホリウッドという町の出だが、農地に囲まれた彼の家の周りには練習用のゴルフコースが造られているそうだ。クライアントの息子の話ではほとんど学校には来ず、ひたすらゴルフの練習をしていたという。

4月に行われたマスターズではリードしながら最終日に大崩れして優勝を逃したため、今回の全米オープンでは北アイルランド中の人がかたずを飲んで見守っていたそうだ。かくいう私も北アイルランドの人たちと付き合ううちに他人ごととは思えなくなっていたので、最終日には朝からテレビの生中継に見入ってしまった。彼は私と身長が同じで体重は私のほうが勝っている?のに、ティーショットの飛距離が340ヤードも出るのが不思議だ。また、ろくに素振りもせずに正確なショットを重ねられるのが信じられない。私など何度も素振りをした挙句、林やら池やらに打ち込んでしまうのだからどうしようもない。

3月にロンドンで会った電機メーカー時代の同僚が帰任を前にゴルフ仲間とスコットランドに行く予定だというので行き先を北アイルランドに変えるように勧めた。行った人の誰もが大絶賛する世界有数のゴルフコースを有する北アイルランドだが、クライアントによると雨や強風が日常茶飯事で、当地でまともにプレーできればほかの国のコースが楽に思えるとのこと。人口が少ない当地が世界トップクラスのゴルファーを生み出すのもこうした環境の影響があるのかもしれない。毎年当地に出張しているのに一度もゴルフをしたことがない私は来年こそはと思っているが、今の実力では到底及びでないかもしれない…。

2011年6月18日土曜日

福岡


突然の福岡出張。同僚だけが参加する予定だった業界団体主催のイベントに県庁やら産業局やら領事館やらの方々が来られることになり、一人では荷が重いといわれ、急きょ私も参加することになった。

あまり頻繁に行かない町の地理はなかなか頭に入らないものだが、福岡に行くのは今年に入ってから二度目で、右も左もわかるようになってきた気がする。特に今回は夜行われるイベントのために一泊することになっていたので、町をぶらぶらと歩き回る時間があり、来月行われる博多祇園山笠のグッズが売られている川端の商店街を散策したり、イベントの翌日には大宰府まで行って好物の梅ヶ枝餅(写真)を食べたりした。

それにしても福岡は何度行ってもいい町だ。東京のように大き過ぎず、人も多過ぎず、それでいて何でもそろっている、というより東京にないものまで置いている。デパートの地下に行けばふつうに辛子蓮根や明太子が試食でき、博多駅近くに見つけた居酒屋では馬刺しが食べられるほか、東京の居酒屋ではあまり見かけないアルゼンチンのワインやアイリッシュウィスキーが飲める。三越の地下にあるフォートナム&メイソンでは東京の店舗にはないスコーンやドーナッツまで置いてあった。

福岡に行くと首都東京が日本でいちばん進んでいるわけではないことを認識させられる。幅が広い道路には自転車専用のレーンが設けられ、地下鉄の駅には東京ではまだ少ない転落防止用の柵が設けられている。また、走行中の地下鉄の車内でも携帯の電波が入るのはソウルと同じで、東京は完全に両都市の後塵を拝している。

せっかく福岡に来てテンションが上がっていたところ、イベントでお会いした建築関係者からまたも中央官庁のがっかりな話を聞かされた。2年前お台場に巨大なガンダム像が建てられてなぜここに?と思ったものだが、もとはヨーロッパから輸入した発電用の風車を建てる予定だったのが、"監督"官庁から姉歯事件で厳しくなった規制を盾に邪魔が入り、せっかく買った風車を泣く泣く中古品として第三国に売るとともに、予定地にガンダムの像を建てることになったのだという。

福岡は東京に行くのと同じ時間で上海まで行かれるそうで、成長著しいアジアの新興市場へのアクセスのよさが大きな潜在力を感じさせる。こうした地方都市が日本にあるがゆえに既得権益を利するだけの中央官庁の理不尽な干渉を受けて成長を阻害されることがないように祈るばかりだ。

2011年6月11日土曜日

姉妹州


契約先の米国ワシントン州から震災被災地の視察のために構造工学技術者の一団がやって来た。10日ほどの日程で宮城県や千葉県の被災地をまわり、東京では大手建設会社の協力で最新の免震技術を使った高層ビルの建設現場を見学させてもらった(写真は駿河台に建設中の大手保険会社の新社屋)。

ワシントン州はカリフォルニアと同じ北米大陸の西側にあるが、大きな地震があったという話は聞いたことがない。しかし視察団のメンバーによると地層などから300年ほど前に大地震が起きたことがわかっているとのことで、このあたりは“千年に一度”のこととして今回の震災の可能性さえ予測できなかった日本の地震研究より実は進んでいるのかもしれない。

被災地での視察を終えて夜に東京に戻った一行が同行していた女性の同僚に歌舞伎町に行きたいと言い出し、私も付き合うことになった。思えば大学時代に飲み会などでよく行っていた歌舞伎町も今や外国からお客さんが来たときくらいしか行かなくなった。なぜ歌舞伎町などに来たかったのかと尋ねると純朴な?エンジニアらしく「(ニューヨークの)タイムズスクエアのようなところと聞いたから」といった。いったい誰がそのようなことを吹き込んだのだろうか…。

今回の視察は一行が大絶賛するほど収穫の多いものとなったが、これもひとえに宮城県庁の協力のおかげだった。同県とワシントン州とは姉妹関係はないが、航空宇宙産業などの交流を目的として以前から県庁の方々の来訪があり、こちらがワシントン州関連のイベントを開催するときにもお招きしてきた。今回はこうした非公式のお付き合いが役に立った形だが、それにしても震災復興の忙しい中、視察への同行に加え、プロ野球観戦や石巻でのボランティア活動のアレンジまでしてくださり、まさに至れり尽くせりだった。

ちなみにワシントン州の姉妹州は兵庫県で、シアトルと神戸も姉妹都市且つ姉妹港の関係だ。これはイメージ的にもぴったりの組み合わせだが、一方で宮城県とデラウェア州との姉妹関係は正直よくわからない。カリフォルニア州の姉妹州も何らカリフォルニアンなものを感じさせない大阪府で、これもよく理解できない(アメリカ村なるところには行ったことがあるが)。こうした姉妹関係は県民自身が知らないことが多いようだが、どのようにして組み合わせが決まったのか知りたいところだ。

2011年6月5日日曜日

大阪

大阪府議会の定数削減。先の統一地方選挙で過半数をとった大阪維新の会の強行採決が話題となっているが、選挙公約で掲げながら国政レベルでまったく実現できていない既成政党に比べてそのスピード感に感心した。

7年ほど前、縁あって英国の経済開発機関の仕事をしていたときに、大阪府議会から議員による視察受け入れの申し入れがあった。大手旅行代理店がアレンジしていたその視察というのは当時のブレア政権下で地方分権が進められていたスコットランドについて学びたいという趣旨だったが、当時の大阪府の財政状況を調べてみると地方分権どころではない全都道府県中断トツのワーストで、なぜそのような台所事情のときに議員がこぞって海外視察などするのだろうかと思った。

さらにその後、サミット(先進国首脳会議)が開かれていたスコットランドの町に当時の府知事がやって来た。次に日本で行われるサミットを大阪に誘致するのが目的だったのだが、個人的にはこうしたイベントが開催されることで地元の経済に持続的な効果がもたらされるとは思えず、また、知事自らがわざわざスコットランドまで足を運ぶことの効果も大いに疑問だったが、案の定、開催地は別の場所(洞爺湖)に決まった。この一件は大阪らしく、わざわざ当地まで足を運んだ知事が風邪でダウンするというオチまでついていた。

当時の状況からすると大阪府の財政が黒字化する日が来るとは想像もできなかったが、それがこうも早く達成されたのだから驚く。これは知事が首相と違って市民から直接選ばれて大きな権限をもっているからだけではく、議員や職員の抵抗にあっても強引に物事を進めたからこそ成しえたのだろう。その後ろ盾になるのはやはり民意であり、それが前回の府議会議員選挙の結果に表れた。逆に民心が離れてしまった首相や首長には反対派や抵抗勢力を押し返す力もなく、結果が出せない。

和を重んじる日本人の決定的な弱みは意思決定の遅さだろう。利害関係者やら専門家やらが集まって長い時間をかけてあれやこれやと議論をしてもなかなか結論が出ず、時間だけが無駄に過ぎていくなどということはほかの国ではあまり聞かない。世の中全員がハッピーな結論などないものと割り切って、どこかでスパッと結論を下さなければ物事は前に進まない。現首相にそれができていれば現在のような事態になることもなかったのではないかと思う。