2010年10月30日土曜日

久留米ラーメン


先日、6年前に他界した父の知り合いの方が九州から来られ、ひょんなことからお会いすることになった。海運関係の仕事をしていた父とはおおよそ畑違いの建設業界の方なのだが、父がロンドンに駐在していたときに当地で世話になったとかで、私の会社が輸入しているオリーブオイルを贈答用に買ってくださったりしている。贈り先が九州で隠居生活を送っている元首相だったり銀座の老舗宝石店の店主だったりするからその交友関係は相当なものと推察する。

待ち合わせ場所は父から会員権を継承した千葉のゴルフクラブ。父とラウンドしたことがあるということで、親子の腕前は雲泥の差ながらご一緒させて頂くことにしたのだ。ところがこの日は台風の影響であいにくの雨模様。ゴルフ場に着く頃には雨足も強まり、初対面の挨拶もそこそこにプレイはやめて食堂でお茶をすることにした。そしてお昼近くなって話も尽きて来た頃に昼食をご一緒することになった。

東京駅近くのホテルに宿泊されているということだったので私の事務所がある永田町のビルにお招きすることにした。稲庭うどん、串揚げ、麻婆豆腐などの店があると説明しているうちに、同じフロアに九州料理の店があることを思い出した。ランチのピーク時間を過ぎた1時以降に出されるここの豚骨ラーメンが本場の九州並みにおいしいのだ。これを選択肢に加えると驚くような話をされた。

この方はブリジストンの創業家で知られる福岡県の久留米出身なのだが、何と当地でラーメン屋を営んでいた父上が豚骨ラーメンの発案者だというのだ。大学時代に当時福岡に住んでいた幼馴染を訪ね、長浜のラーメン屋に連れて行ってもらって以来、元祖を名乗るその店が豚骨ラーメンを始めたものと思っていた。後でネットで調べてみると確かに豚骨ラーメンは久留米発祥とあった。

この九州料理の店はほかの定食類がイマイチ(失敬!)なのに比べて豚骨ラーメンはちゃんと細麺を使っていて豚骨出しの味もしっかりしている。くだんの幼馴染に教えられた都内の豚骨ラーメン屋がその知名度に反比例して出されるラーメンがかなりがっかりな代物になり下がっていった中、事務所の目と鼻の先にちゃんとした豚骨ラーメンを出す店が見つかったのは実に嬉しいことだった。

豚骨ラーメンの発案者の御子息と知って私が良とする豚骨ラーメンが果たしてお眼鏡にかなうかちょっと心配になったが、おいしいといわれて安堵した。そして店員さんとの会話からこの店のオーナーも久留米の出身ということがわかり、メニューをよくよく見てみるとラーメンは豚骨ではなく久留米ラーメンとなっていた。

九州の財界は結びつきが深いのか、うちの会社が取引を考えていた唐津の会社の社長と親しい間柄とのことで、九州に行ったときには地元の老舗ゴルフコースでラウンドをアレンジしてくださるという。この上は出張をでっちあげて?本場の久留米ラーメンを食べに行こうかと思う。

2010年10月24日日曜日

スマートフォン

「朝起きた時にメールボックスに未読メールが残っているのがいやなんだよね。」電車で隣合わせたサラリーマン二人組の会話。どうやら四六時中メールがチェックできるスマートフォンを買うべきか否か話しているようだった。朝メールボックスに未読メールが残っていないというのは海外との取引がないということなのだろう。

私はワンセグ機能がついているものが出ていなかったためスマートフォンへの切り替えをやめたことがあったが、その判断は正しかったと思う。というのも常にメールが読める状態にあると人に思われたくないからだ。携帯は基本的に常時持ち歩いているもので、よほどへんぴなところに行かない限りつながる。その携帯でメールが見られるとなると、読めない状況だったという言い訳?ができなくなる。そんなのはごめんだ。

取引先にメールを送るといついつまで不在にしているので緊急の用件は誰それまでいってくれといった自動リプライが送られてくることがよくある。しかし相手がブラックベリーを使っていたら間違いなくメッセージを読んでいるものと踏み、構わずメールを出し続ける。そして実際に程なくしてブラックベリーのマークがついたリプライが来たりする。しかし私自身はそのような立場にはなりたくない。幼い頃、自分がやられていやなことを人にするなと教わった気がするが、相手が自らの意思でスマートフォンを選んでいるのだからその限りではあるまい。

それにしてもその日のうちに未読メールをなくしておきたいという心理も難儀なものだ。メールの中には重要なものも緊急なものもあるが、人によってはさして緊要性のないことをあえて書いて来たり決定事項でないことを中間報告的にいって来ることがある。よほど緊急性が高いのであれば携帯に電話をかけてくるだろうから、すべてのメールをその日のうちに読む必要性はそれほどなく、ましてや来たメールにいちいち答えるというのは時間の無駄、と私は思う。

2010年10月17日日曜日

HOOTERS

「Hootersができるんじゃないですか!」
永田町の事務所に移ってから在宅勤務を始めた八王子在住の同僚が久しぶりに事務所に来るなり超ハイテンションでいった。

最近赤坂見附の駅前に大きなオレンジ色の看板が突然出現したのでいったい何の店だろうと会社のパソコンでグーグってみると、チアリーダー姿の若い女の子が給仕をする店だとわかった。アメリカのほかにアジアにも店舗があり、今回日本に初出店することがわかった。

同僚はHootersがアメリカのそこかしこにあり、知らない者はいないといったが、私は出張先が地味な町ばかりだからか一度も行ったこともなければ聞いたこともなかった。その後開店準備を進める店の前を通るたびに中を覗き込む人たちを見かけ、日本に出店する前にコアなファン層を獲得していることに感心した。チアリーダー姿というのはミニスカートのウェイトレスが給仕をするアンナミラーズよりあからさまだが、ハマる人はかなりハマるようだ。

事務所にバイトに来ているアメリカに留学経験のある子に聞いてみると(女性に聞くのは不適切と思いつつ)、彼女の留学先のシアトルにも店舗があり、何と彼女自身も行ったことがあるということだった。そしてウエイトレスの子たちは皆“超”かわいかったという。店のコンセプトを考えれば当たり前か。

日本の第一号店の開店が今月末に迫っているが、ここ1、2週間ほど店内でバイトの面接をしている様子が伺える。ウェブサイトの募集要項を見ると採用基準が明白であるにかかわらず、容姿に関する記述も年齢制限も書かれていない。いささか偽善的にも思えるが、ややもすると女性蔑視に見られかねない商売なのでやむをえないか。制服は「チアガールをイメージした健康的なもの」と書かれているのが笑える。

事務所の目と鼻の先なので話のタネに一度は行ってみようと思ってはいたが、さっそく来客にお誘いを受けた。同僚と同じく事務所に来る途中に看板を見かけたそうで、女性の同僚もいるランチの席で台湾のHootersに行ったときのことを語った。同僚並みにハマってしまったようだ。半年以上ぶりにお会いし、急ぐ商談があるわけでもないのに、その後すぐにメールが来て月末に行こうという話になった。

しかしよくよく調べてみるとこの日は開店当日。テレビの取材カメラなども入りかねない。アメリカでは奥さんに知られるといやな顔をされるという店にいるところを映されて全国放送されるのはいかがなものか。しかも開店の当日に行くなんていかにも“待ち切れなかった”感丸出しである。かなりリスキー…。

2010年10月11日月曜日

困った来客

仕事柄海外からのお客さんを相手にすることが多い。ほとんどの場合、ビジネスの常識をわきまえている人たちがやって来るが、業界によってはかなりハイレベルな“困ったちゃん”に出くわすこともある。

先月事務所にやって来たアメリカ人建築家と彼のPR会社の女性担当。事務所に来たときは和気あいあいとしていたが、同僚が外に連れ出すと銀座のど真ん中で大声でけんかを始めるなど、さんざんだったそうだ。

建築家の方はまだ40前の若さだが、持続可能な建築を目指すグリーンビルディングの世界で実績をもつ人物で、今回の滞在でいきなり案件を受注したというからたいしたものだ。しかし大手企業との面談にジーンズ姿で現れたり、面談のための資料を何も用意していなかったり、待ち合わせの時間に待ち合わせの場所に現われなかったり、勝手にホテルを移ったりと、やりたい放題だったという。アテンドする側はたまったものではないが、聞いた私は笑うしかなかった。

一方のPR会社の50代と思しきおばさんもまたすさまじかった。週末に観光で京都に行き、当地がたいそう気に入ったのはいいが、京都はホテルも安いといって東京のホテルをチェックアウトして京都に移ってしまった。聞けば外国人向けの鉄道パスを持っているので新幹線はひかりかこだまが乗り放題とのこと。それにしても毎日京都から東京に通うという発想に驚く。さらに東京で訪問した会社の中年のおじさん(アテンドした同僚によると特に恰好よいわけでもない)に一目ぼれし、薬指に指輪をしていたのでチャンスがあるかしらなどといっていたそうだ。いったい何をしに日本に来てるんだい!といいたくなるがやはり笑える。

ほかにも展示会に出展するはずが来なかったという企業もあった。それも1社ではなく3社もだ。しかもそのうちの2社は事前に何の連絡もよこさず、こちらが会場にいってブースがもぬけの空で初めて気づいたというありさまだった。ここまで来るともはや文化の違いでは済まされない。

こうしたハプニングには笑えないものもあるが、それでもどの企業の人も悪気なくやっているので私にはむしろかわいく思えたりする。これも外資系証券会社などに勤めていたからだろうか…。

2010年10月3日日曜日

すててこ

何たるオヤジくさい響き…。だがこれが使い始めたらやめられない。

きっかけは防寒のためではなかった。もともとウールのズボンの肌触りが苦手だったので荻窪の西友で見かけて買ってみることにしたのだ。実際にはいてみるとウール地が直接肌に触れないのでちくちくとしたいやな感触がしない。背広を着る日は欠かせなくなった。

しかしすててこをはき始めてから別の効果にも気づいた。ずぼんの裏地に直接肌が触れないため、汗などの汚れがつくのを防げるのだ。一日はいたすててこの汚れ方から、頻繁にクリーニングに出さないスラックスが実は相当汚れていることに気づいた。すててこは毎日洗うものなので何とも気持ちがいい。

このことに気づいてからカジュアルの服装の日もすててこをはくようになった。綿製のずぼんは汗などの汚れがつきやすいが、すててこをはいていれば汚れ方が少なく、ずぼんを洗濯する頻度も少なくてすむ(つまりはずぼんが長持ちする)。ところが西友のすててこは化繊なため夏場は蒸れて困る。また汚れも落ちにくい。ユニクロの新素材は肌触りはまずまずだが肌に密着するので鬱陶しいし、夏はやはり蒸れる。結局行き着いたのがイトーヨーカ堂の綿製のすててこで、自然な肌触りが心地よいだけでなく、肌に密着しないので夏場も風通しがよくて気持ち良い。しかし近所にイトーヨーカ堂がないので企業訪問で大森あたりに行ったときにまとめ買いをするようにしている。

初めはすててこを愛用しているなんてあまりかっこうのいい話ではなく、肌着なので黙っていれば誰に知られることもないと思っていた。しかしその後どうあがいてもオヤジといわれる年齢に達してしまっていてすててこをはいていても何ら不自然でないことに気づき、最近ではまわりに積極的に勧めるようになった。