2009年9月25日金曜日

民族大移動

5連休に能登半島を旅し、景気回復のヒントを見たような気がする。飛行機、車、鉄道という3つの交通手段で移動したが、能登行きの飛行機は何週間も前から満席、高速道路の値下げとの相乗効果か観光地や道の駅の駐車場には関東はもとより遠くは東北、北海道や九州のナンバープレートの車があって、連休最終日の東京行きの特急は指定席がとれないほど混雑していた。まるでゴールデンウィークのようで、やはり人は連休が長ければ長いほど遠出をしたくなるものらしい。私もサラリーマン生活が長かったので、いまだに週末や国民の休日でないと大っぴらに休んで旅行するのがためらわれる。

いつも行き当たりばったりの旅行でしのいできた私も今回ばかりはスムーズにいかなかった。連休初日に予約もないまま羽田空港に向かい、幸運にも間際に一席だけ空いたフライトに乗り込むことができ、能登空港でも3社あるレンタカー会社のうちの1社に1台だけ空きが出て車を借りることができたが、その後の宿探しは容易でなかった。それまで想定されていたよりも多くの人たちが能登半島におしかけたせいか、どの町でも宿がいっぱいの状態だったのだ。

一泊目は運良く穴水ですんなりと空いている旅館を見つけることができたものの、二泊目は相当数の宿に電話をかけてようやく輪島郊外に一部屋だけ空いている民宿を見つけた。三泊目に至っては予定していた羽咋(はくい)で空いていたのがあまり泊まりたくない雰囲気のペンションだけだったので、金沢まで出れば何とかなるだろうと夜道を車を走らせて行ったもののホテルはことごとく満室で、そこからさらに富山まで行き、親切な富鉄の職員さんの助けでようやく一軒だけ空いているホテルを見つけることができた。チェックインしたときには夜の10時をまわっていた。それでも旅行期間中毎晩宿が見つかったのは運がいい方だったらしく、朝市で有名な輪島では公共の駐車場に車をとめて夜を明かした人たちも多かったと聞く。

帰路は飛行機にするか鉄道にするか迷ったが、松本あたりでもう一泊することを想定して鉄道にした。ところが連休最終日の松本からのあずさ号の指定席がほとんど取れない状況と知り、運良く取れたその日の指定席でそのまま東京に戻ることにした。私が乗った車両の前が自由席の車両だったが、立ちっぱなしの乗客があふれ出ていた。

このような光景を見ると連休期間中に日本全国でどれだけの人たちが国内を旅行したのだろうかと思った。そして連休の日が一日少なかっただけで旅行に出る人の数も移動距離もずっと少なかったのではないかと想像した。今や観光客向けの商品を売る店ばかりになってしまった輪島の朝市を訪れる人たちの購買意欲は必ずしも高くないように感じられたが、それでも人が移動すれば宿泊施設や交通機関は潤う。また、都会に住む人が地方に出かけることの方が多いだろうから、今回の5連休は地方に相当な経済効果をもたらしたのではないかと思う。この上は(個人的な願望を含めて)祝日の並びに依らず、毎年秋の5連休をやってはどうかと思う。

2009年9月22日火曜日

フラッグキャリアの受難

経営危機を迎えている日本のフラッグキャリア。昨年株を買った身としては(もちろん優待券ねらい)実に悲しい…。この上は資本注入を受ける相手からなるべくいい条件を引き出してもらいたい。

しかし日本航空が経営危機に陥ったのは多分に人災の面があるように思う。例の新型インフルエンザ騒動だ。日本が政府とメディアをあげて大騒ぎをし、WHOも効果を疑問視していた水際作戦に多額の税金を浪費する一方で、作戦が不発に終わって感染が拡大し始めたとたん今度は感染者の“あらさがし”を始め、日本を公表数字上感染者が多い国にしてしまった。ほかの国で日本ほど感染が進んでいないわけはないだろうから、どれだけ積極的に調べて公表するかの違いだろう。日本のように新型インフルエンザをことさら大げさに心配し、かつ国民がすぐに医療機関で受診する国でなければ感染して治った人たちの数など把握しようがない。

こうした大騒ぎをした結果、日本から感染国とされた国々に行く予定だった人たちだけでなく、日本に来る予定だった出張者や観光客も渡航をキャンセルし、国際線への依存度が高い日本航空に大きな打撃を与えた。うちの会社もインドからJALで来日する予定だった人が日本での新型インフルエンザの感染拡大のニュースを聞いて、予定していた日本への出張を取りやめた。「あなたの国でもきちんと検査をすれば相当数の感染者がいるはずだよ」といいたいところだったが、もちろん口には出さなかった。

今も続く新型インフルエンザ報道。いったん大騒ぎをしたマスコミとしては今さら引っ込みがつかないのかも知れないが、季節性インフルエンザで死亡する人の絶対数や割合との対比はいまだに聞かれず、“新型”というだけで大騒ぎを続けている感が否めない。これがグループ企業を含む従業員数が5万人近い一大航空会社の経営を傾け、国内の観光産業に大きな打撃を与えたとなると日本は自作自演のパニックで自滅したといえよう。

2009年9月12日土曜日

ショパンコンクール

金曜日に同じ年にソニーに入社した女性(中野ブロードウェイ近くの老舗甘味処の娘)から“ショパンコンクール”なるタイトルのメールが届いた。何事かと思って開いてみると、何と我々の同期入社の木下君が国内の選考をパスし、ワルシャワで行われているショパン・コンクールに参加しているとのこと。そして翌日には本人から同期会のメンバー宛てに二次選考もパスし、本選に進むことができたとのメールが来た。

コンクールのウェブサイトを見ると本選出場者はわずか8人。世界各国で行われている予選に何人が参加したかわからないが、その枠に残れたこと自体が大変なことというのは想像がつく。しかも彼は私と同年代のサラリーマンで、この20年間は一日中練習に没頭できる身ではなかったはず。無芸小食?の私には想像がつかない快挙だ。

私はこの木下君のことを実はよく知らない。バブル景気が始まる前とはいえ、四年制大学卒業の文系採用者だけでも140人余りいたため、同期会のメールがまわってきても半分くらいは顔が思い浮かばなかったりする(私が友だちが少なかっただけかも知れないが・・・)。また、私が本社に配属されたのに対して木下君は今の本社ビルが建っている芝浦の事業部配属だったので顔をあわせる機会もなかった。

同期の集まりなどで彼の話題がのぼることがあったので、同期入社にピアニストがいることは認識していたが、彼はピアノの練習が忙しかったのか、そうした飲み会で見かけた記憶もない。何ヶ月か前に彼の演奏がYou Tubeにアップされたとの連絡を受けて見てみたが、やはり見覚えがなかった。演奏は素人目にもすばらしかったが、よもやショパンコンクールに出るほどの腕前とは思わなかった。

面識はないとはいえ、同期入社の仲間。この上はアーチェリーの山本博氏、スーザン・ボイルに続く◯年の星として健闘を祈りたい。

2009年9月6日日曜日

バランス感覚

衆議院議員選挙の投票日、まだ投票が行われている最中の昼の日中に知人から「民主党圧勝」のメールが来た。知り合いに投票所で立会いをしている人がいるとのことだったが、投票に訪れる人たちが誰に投票しているかはわからないはず。後で聞いた話では、投票用紙を二つ折りにせずに投票箱に入れる人が多くて立会人から丸見えなのだそうだ。案の定、民主党が大勝した。

政治学を専攻していた大学時代、選挙報道が有権者の投票行動に与える影響を研究テーマに選ぼうとした。有権者のバランス感覚が働いて事前報道で優勢と伝えられた政党から票が逃げるとする説と、逆に勝ち馬に乗ろうとする人が出てよけいに差がつくという説があるが、いずれも検証されておらず、個人的に興味をもっていたテーマだった。ゼミの教授も大いに賛成してくださったが、結局検証の方法で行き詰って断念した。

バランス感覚が働く人たちは確かにいるようだ。友人の一人は事前の予測で民主党が大勝すると報じられたので小選挙区では公明党の対立候補に入れようと思うといった。民主党に大勝させないために学会員でもないのに公明党に入れようとするというのにはいささか驚かされた。しかし今回の選挙はそうしたバランス感覚を働かせる一部の人たちの投票行動をも吹き飛ばしてしまうくらい強い意思をもって民主党に票を投じた人が多かったようだ。同僚はふだん投票所で見かけない風貌の人がおおぜい来ていたといい、別の知人は投票所に長い行列ができていたのでいったん家に戻って後で出直したという。かつて民主党の小沢氏が、国民が生活に不満をもったときに政権交代が起きるといっていたそうだが、今まさにそのような状況なのだろう。

私はバランス感覚を働かせようとする友人に対し、民主党が安定多数を確保した方が責任の所在がはっきりしていいではないかといった。選挙が終わってもその考えに変わりはないが、大敗を喫した自民党で小選挙区での辛勝または比例代表での復活当選でかろうじて残ったのがあまり先が長くなさそうな人たちばかりなのを見て、いよいよ始まったと思っていた二大政党制が早くも崩れ去ったとの印象を受けた。この上は民主党の政治が行き詰まったときにそれに代わりうる、利権絡みでない新たな政治勢力の台頭に期待したい。