2009年11月28日土曜日

ボジョレーヌーヴォー

大手スーパーでボジョレーヌーボーが1本800円で売られているというニュースを聞き、いよいよ来たか、と思った。大量に仕入れているからだとかペットボトルに入れて輸送費を浮かしているからといった説明がついていたが、円高がピークに達していた1990年代半ばでさえ小売値ベースで数千円していたものがそれだけの理由でここまで下がるなどということなどない。もともとが安い酒に厚いマージンを乗っけて売っていたのがこの不景気でそれができなくなり、原価に見合った価格に調整されたというのが本当のところではないだろうか。

電機メーカーに勤めていた10数年前、欧州本部の幹部を務めるフランス人が、「もともと酸味が強くて高い値段で売れなかったシーズン初めのワインに解禁日なるものを設けて売り出したところ、高い値段で売れるようになった。まさにマーケティングの成功事例だ。」といっていたが、マスコミもこぞって取り上げてまんまとこうした戦略にひっかかった日本人はいいカモといったところだろうか。このフランス人は、ソムリエコンテストで日本人を優勝“させた”のも日本でワインを拡販する戦略だったといっていた。その真偽のほどはわからないが、確かにその後日本でワインの一大ブームが起きた。

どうして日本人はこうもフランス人のいいカモになるのか。日本に視察旅行に来たことがあるというエジプト人ビジネスマンが、日本人はフランス製だとかイタリア製だとかいうとすぐに飛びつく、となかなか鋭い指摘をしていたが、やはりフランスには多くの日本人に憧憬の念を抱かせる何かがあるのだろう。アメリカやイギリスには同じようなイメージは抱かないところを見ると、やはりすぐれた食文化やファッション、フレグランス、おしゃれな生活用品などが国自体のイメージを高めているのかもしれない。

それにしても業者が流す情報をそのまま報道するテレビ局もいい加減なものだ。今年は50年に一度のできだというが、50年に一度といわないまでも、毎年同じように今年の出来は特別にいいというようなことを繰り返している。ボジョレーヌーヴォーなるものが日本で売り出されてからこれまでできが悪かった年がなかったわけではなかろう。まあワインの出来不出来など世の大勢に影響はないので誤報もありなのかもしれないが。

しかしバブル期には解禁日にまっさきに飲むために成田まで行っていた人たちがいたワインもスーパーで安売りされるようになると大きなイメージダウンだ。かつてのような大きなマークアップもしづらくなるだろう。もともと味のわりに値段が高いので買わずにいた私もここまで安くなると買ってみようかという気が起きてくる。

2009年11月21日土曜日

レンジシェフ

あるテレビの番組で加熱調理の時間を短縮できるというタッパーウエア状の調理器具の存在を知り、さっそく買ってみた。これがなかなかいい。火が通りにくいジャガイモなどの根菜類も効率よく温めることができるし、コンロのように火の加減に注意しておく必要がない。鍋でぐつぐつ煮込むような料理は時間がかかりがちだが、レンジで予め具材に熱を通しておけば仕上がりが早く味もよくしみ込む。焦げ目をつけたい場合はフライパンで表面を焼いておけばよい。コンロの火を使う時間が短い分、焼き過ぎたり焦がしたりする心配が少ない。

この器具を使い始めると何でも面白いように短時間でできてしまうため、自分で料理することが多くなった。最近では鍋とフライパンと組み合わせて同時並行で2品作ってみたりする。一方で出たスープをもう一方の料理に利用できたりして効率がよい。また、自分で料理を作ると自分好みの味にできるのがよい。エジプトの取引先の奥さんに教わった肉料理はニンニクと玉ねぎを使って長時間煮込むのだが、レンジを使えば相当時間が短縮され、また自分で作るのでニンニクも入れ放題だ。

既成概念にとらわれない色々な食材の使い方や調理の仕方を試すことができるのも楽しい。たとえば鶏のから揚げ。から揚げというには油で揚げなければ(ディープフライ)できないものと思いがちだが、うちで使っている油はオリーブの実を圧搾して作った貴重なオリーブ果汁そのものなので、揚げ物に使うのは何とももったいない。そこでレンジで熱を通した後の鶏肉をから揚げ粉にまぶしてオリーブオイルを敷いたフライパンで焼いてみたところ、から揚げそのものの味に仕上がり、しかも揚げるよりも肉がやわらかくジューシーになった。鶏肉を温めた際に出た汁はおいしい鶏がらスープになるので一石二鳥だ。

最近ではテレビのジタン(時間短縮)料理を参考にして新たな調理法を試したり、さらにメニューのバラエティを増やすようになっている。個人的に気に入っているのは肉料理に麩を使うこと。薄くスライスされた肉(切り落としでもよい)を買ってお麩に包んで調理すると分厚い肉と同じ触感になり、しかも味がよくしみ込んでおいしい。しかも肉の脂身のような触感なので誰も麩を使っていることに気付かない。肉の塊を使うよりも経済的なので、同じ予算でワンランク上の肉を買うことができ、しかもヘルシー。言うことなしだ。

こんなことをしているうちにふと思った。これほど食いしん坊で倹約家(ケチではない!)な私がなぜこれまで外食ばかりして自分で料理を作ろうと思わなかったのか?そして気づいた。このような便利な調理器具にめぐりあうとすぐに始めるくらいなので、自分が倹約家ぶりをも上回る相当な面倒くさがり屋であるということに。

2009年11月14日土曜日

アキバ


エジプトの取引先からの突然のメール。知人が来日しているので会ってみてはどうかとのこと。さっそくその知人という人から事務所に連絡があり、週末に会う約束をした。取引先の知人という以上の情報がなく、よく素性がわからぬまま会う約束をしたのだが、滞在中の予定について話す中で駐日エジプト大使が同行するミーティングだの、カイロ大学に留学していた元防衛大臣(環境大臣)との会食だの、元駐エジプト日本大使との会食だのといったことを聞かされてこの人はいったい何者だろうと思った。

土曜日の昼前に赤坂のニューオータニホテルのロビーで待ち合わせて銀座の煉瓦ビルにあるレストランに連れて行った。この店にはエジプトの取引先が作っているオリーブオイル(といってもそのへんで売っているものとは違うオリーブ果汁そのもの)を納めているので、それを味わってもらう意図もあった。そして話をする中で、氏がエジプトの元首相のご子息であることを知った。また、もともとエンジニアであった氏が若い頃、私が勤めていた電機メーカーの旧本社に研修で来ていたという偶然にも驚いた。氏は50歳代と思しき年齢なので、おそらく私が入社する前の話であろう。

食事の後、氏がお土産を買いに秋葉原に行きたいというので付き合うことになった。思えば秋葉原に行くのは久しぶりだ。外国人観光客の定番スポットになっていると聞いてはいたが、実際に行ってみると“免税(duty free)”を謳った外国人観光客向けの店が目立って驚いた。しかも店内には家電製品だけでなく、日本のお土産として人気のありそうなお土産(といっても価格の安い衣類や置物などでMade in Chinaと書かれていたりする)が所狭しと並んでいる。アキバもしばらく来ないうちにずいぶんと様変わりしたものだ。

秋葉原にはラオックスに限らず中国人経営の店が増えているそうで、氏が携帯電話で呼び出したエジプト政府観光局の駐在員の話では我々がいた店も実は中国人経営とのこと。接客にあたっているのはさまざまな言葉を操る若い外国人店員で、商品知識もまずまずでセールストークも要領を得ている。氏の接客にあったったのは流暢な日本語と英語を話すリーという名字の青年で、中国の朝鮮族だとすれば北京語もネイティブ並みに話すのだろう。かつてここで商売をしていた小規模店主にはなかなかこうした店の経営まではできないため、秋葉原が外国人の観光名所に変貌していく中で店を手放したのだろうかなどと想像した。

免税という言葉に弱いのは日本人ばかりではないようで、こうした看板を掲げる店は外国人観光客と思しき人々で賑わっていた。観光客の誘致に励む政府の施策だとすれば十分効を奏しているようだ。しかし国際空港ではなく東京の町なかで免税というのはいったいどういう仕組みなのだろう?見ると観光客がパスポートを提示し、店側が購入した商品を記した書類をホチキスでパスポートのページに留めていく。出国の際にこの書類を外されるのだそうだが、それで海外に持ち出すことを確認できるのだろうか。リー氏に聞いてみると預入れ荷物に入れてしまったといえば誰も確認できないとのこと。つまりは日本人が外国人観光客にお金を渡して電気製品を買ってもらえば消費税分が安くなるということ。消費税が5%の間はたいした金額にはならないかもしれないが、10%にでもなればこうした違法行為が横行しかねない。若干脇が甘くも見える観光客誘致策だが、おそらくそうしたことも想定しながら踏み切ったのだろう。

エジプトからの思わぬ来客のおかげで久しぶりに行く機会を得たが、オタクでもなければアキバ系ともほど遠い私にとって秋葉原は基本的に用事のないところ。噂には聞いていたが、これほど観光地化されているとは思わなかった。銀座や浅草からも近いので、外国からの来客を手軽に連れて行かれる場所としてメニューに入れることにした。

2009年11月7日土曜日

電磁波

投資銀行時代、営業でちょくちょく大阪に行っていた。大阪だと新幹線を利用する人が多いが、私は飛行機派だった。訪問先の一つが空港からアクセスのよい場所にあったこともあるが、新幹線で行くと疲れがひどく感じられたからだ。その後、新幹線の車内は電磁波がすごいことになっているという話を聞き、もしかしたらそのせいだろうかと漠然と思っていた。

広島への出張となれば新幹線に乗っている時間は大阪の比ではない。当然飛行機にしようと思っていたが、仕事を終えて羽田に着ける時間がわからず、最終便に乗れても空港から乗り継げる公共の交通機関はない。しかも以前から聞いていた通り広島の空港はひどくへんぴなところにあり、広島空港から福山までタクシーで行こうものならいくらかかるかわかったものではなかった。東京から福山までの所要時間を調べるとほとんど変わらなかったこともあり、本数が多く、夜遅くでも福山に行き着ける新幹線にすることにした。

東京から福山まで4時間近く。少しでも体力の消耗を減らし、且つ車内での時間を有効に利用できるように座席にノートPCをつなげる電源がついているグリーン車にした。しかし夜の東京駅でガラガラのグリーン車に乗り込んですぐに失敗した!と思った。グリーン車独特のいや〜な臭いが鼻をついたからだ。東海道新幹線のグリーン車に乗るのは久しぶりだったのですっかり忘れていたが、座席に使われている素材が発するのか独特の臭いが車内に充満していて私はそれが大の苦手。そんなところに4時間もいなければならないと思っただけで気分が滅入ってしまった。気を紛らそうとさっそくノートPCをつけてネットにつないだが、新大阪を過ぎる頃にはかなり気持ち悪くなって吐き気さえしてきた。すんでのところで車内販売が回って来て、温かいコーヒーを胃に流し込むことでとりあえず落ち着くことができた。

翌日広島での面談を終えるとその足で次の訪問先がある滋賀に向かった。福山から京都までは新幹線で1時間20分ほどの所要時間だった上、普通車に乗ったおかげでだいぶ楽だった。翌日は滋賀での面談を終えた後、大阪に戻ってもう一社訪問したが、東京への帰路は迷わず飛行機を使った。電車の乗り継ぎがよかったため、2時に京橋(大阪の)で面談が終わった後、3時の大阪空港(伊丹)発の便に間に合い、4時半には新宿に着いていた。この間わずか2時間半。新大阪から品川までの新幹線の所要時間と同じで、京橋から新宿までだと1時間の時間のセービング。やはり飛行機はいい。

後日、通っている整体師さんにこの話をすると新幹線の車内はものすごい電磁波に加えて微妙な振動があって、それが人体に影響を与えるのだといわれた。自分がそれほど敏感な人間だとは思っていなかったが、何度乗っても同じような疲労を感じるのできっとそうなのだろう。今回吐き気までしてきたのは乗っていた時間が長かった上、グリーン車の臭いも加わってまさにトリプルパンチだったからか。飛行機の機内も相当な電磁波があるそうだが、乗っている時間が短い分、人体への影響も少ないという。これからは東京から京都までの2時間20分を新幹線に乗る最長距離(時間)と定めて徹底し、グリーン車は避けるようにしたい。