2010年1月2日土曜日

ケープタウン


中学の世界史の授業で習った南アフリカの喜望峰は一生に一度行ってみたい場所だったが、同国の治安の悪さについては旅行の事前準備として調べるまでもなくわかっていたので当初の旅程には入れていなかった。しかしビクトリアフォールズから次の目的地に向かうためにはどうしても同国の中でももっとも危ない町といわれるヨハネスブルグに一泊しなければならないことがわかり、急きょケープタウンに“退避”することにした。ケープタウンはヨハネスブルグよりは安全と聞くし、帰路は朝早い便に乗ればヨハネスブルグで同日乗り継ぎをして南アフリカを脱出?できる。

ところがビクトリアフォールズからのフライトが遅れて大変な目にあった。機体の到着が遅れた上に、積載重量が予定を超えたために燃料が足りなくなり、隣国のザンビアに立ち寄って給油をしなければならないという。何か釈然としない説明だったが、後に客室乗務員からイギリスの大手石油会社がジンバブエから撤退を始めたために空港に燃料の備蓄がなくなっているのだと知った。出国の段になって一見平和でのどかなビクトリアフォールズの町も混乱が続くジンバブエにあることを再認識させられた。

乗客はクーラーのない空港の待合室で長時間待たされ(虫よけがなくなっていたので汗をかきながらまたマラリアが心配になった)、ようやく機内に乗り込んだらまたクーラーのない状態で長時間待たされ、離陸してほどなく到着したザンビアの空港で給油を受けた後も何の説明もないまま炎天下の滑走路に駐機された機内でまた長い時間待たされた。このままケープタウンへの乗り継ぎ便に乗れずにヨハネスブルグに滞在することになっては元も子もないので気が気ではなかったが、ぎりぎりで予定していた次の便に乗り込むことができた(ホッ)。

ヨハネスブルグより安全といわれるケープタウンに着いてひとまず安心したのもつかの間、空港から宿に向かうタクシーの中で運転手にペンギンを見に行くにはどうすればいいのか尋ねると、鉄道があるが外国人が乗ると命に危険が及ぶ(life threatening)というから穏やかでない。これまで色々なところを旅行してきたが、こんな強烈なことばを平然といわれたのは初めてだ。ていうか、そんな国がサッカーのワールドカップを開催していいのだろうか…。安全が当たり前の日本から来るサポーターにとっては想像をはるかに超える状況で、彼らの身に何も起こらないとは思えない。

滞在先のB&B(ベッド・アンド・ブレクファスト)は市内でも安全といわれる高台の高級住宅地の中にあったが、それでも暗くなったら近距離でもなるべくタクシーで移動するようにいわれた。命は金に代えられないので、テーブルマウンテン(市内や喜望峰を一望することができる、てっぺんが平たい山)やウォーターフロントなどの市内の観光はすべてタクシーで回り、郊外にある喜望峰、ペンギン園、ワイナリーなどは2日に分けてツアーで回ることにした。

滞在はそれなりに楽しいもので念願の喜望峰を見ることができたのも(何があるわけでもないただの岬だが)嬉しかったが、ケープタウンも失業率が30数%といわれる南アフリカ社会の現状と無縁ではなく、とりわけ安全が当たり前の国から来ている人間には積極的に勧めることはできない。行くのであれば常に最大限の注意を払い、市内の観光はタクシー、郊外へはガイド付きのツアーで行くことだろう。

(写真はテーブルマウンテンから望む、喜望峰に沈む夕日)