2009年4月27日月曜日

ジャージー・ボーイズ


久しぶりのニューヨーク。エンタテイメントに事欠かないマンハッタンは週末を過ごすのにもってこいだ。アメリカに来る観光客の数は景気に大きく左右されるがニューヨークは例外と聞く。ここと肩を並べる場所がほかにないからだろうか。

私がニューヨークに来る目的は何といっても観劇だ。特にブロードウェイミュージカル。今回も二泊三日の短い滞在ながら、中日にブロードウェイ、オフブロードウェイ(小規模劇場)合わせて3つのショーをはしごした。中でも圧巻だったのは1960年代にアメリカで一世を風靡したロックグループの実話を描いた“ジャージー・ボーイズ”。日本でいえば埼玉県的なイメージのニュージャージー州で育ったイタリア系移民の若者たちがザ・フォーシーズンズ(ホテルチェーンではない)という名前のバンドを結成し、一気にスターダムにのし上がる。しかしその後多額の借金や家庭不和などの問題を抱え、さらにメンバーが相次いで脱退。それでも新たなメンバーを加えて活動を続けたリードボーカルのフランキー・ヴァリとプロデューサーに転じたボブ・ゴーディオは我々日本人もよく知る“Can’t take my eyes off of you(君の瞳に恋してる)”などのヒットで再起を果たす。

計画性のない旅行が常の私は事前に下調べをすることもなかったのでこのミュージカルのことを知らなかった。それどころか私が生まれた前後に絶頂期を迎えていたザ・フォーシーズンズの存在すら知らなかった。このショーに興味をもったのは不景気でブロードウェイ全体の観客動員数が減っているといわれ、“マンマ・ミーア”や“ライオン・キング”といった人気演目の切符が簡単に入る中、唯一何日も先まで完売している人気ぶりだったからだ。そしてダメモトで行った劇場のボックスオフィスで前方のいい席が一つだけ残っていたのは実に幸運だった。

ジャージー・ボーイズはザ・フォーシーズンズが歩んで来た道をメンバーの人生の喜怒哀楽を交えてテンポよく描いているストーリーもさることながら、出演者の歌唱力に圧倒される。これまでブロードウェイで見たミュージカルの中でも一、二を争うレベルに思われた。ただ、このショーが常に満席なのがそうした理由だけではないこともうかがえた。来場者のほとんどがフォーシーズンズの絶頂期に青春時代を送ったベビーブーマーと思しき年齢の人たちで、母数が多い年代の圧倒的な支持を受けていることも一因に思われた。また、劇中でニュージャージー絡みのセリフが出てくると客席が大いに盛り上がることから、フォーシーズンズの出身地であるお隣のニュージャージー州からかなり多くの観客を集めていることもうかがえた。

これまでもう一度見たいと思ったショーはそう多くないが、ジャージーボーイズは間違いなくその一つとなった。問題は次回いつまたニューヨークに来られるかだ…。