2019年5月26日日曜日

言いなり外交

弱い野党には滅法強く出る我が国の首相も強いアメリカの大統領には卑屈なまでに低姿勢だが、同大統領が来日前に約200年ぶりの天皇の生前退位を念頭に「安倍首相は私に『あなたは名誉ある賓客だ』と言った。世界中の国々のなかでこの200年のうち最大の行事で私が賓客なんだ。」と語ったと聞き、あのような人物をノーベル平和賞に推薦するだけでなく、新天皇に200年ぶりの賓客として迎えさせるなど、ずいぶんと国の品位を落としてくれたものだと思った。(「接待外交で日本車に対する関税引き上げを免れようとする日本」と報じるアメリカのメディアと対照的に脳天気に大統領の一挙手一投足を生中継する国際感覚を欠いた日本のメディアもいかがなものかと思うが。)そこまで下手に出て国益を守れているかといえば、二国間の貿易交渉に持ち込まれた上に押し込まれる一方で、むしろ下手に出過ぎて完全になめられている印象しかない。案の定、来日直後に行われたビジネス界代表らとの夕食会で大統領に2国間の貿易はもっとフェアなものにすべきといわれ、夏の参議院選後は日本に容赦なく要求を突き付ける意向をツイートされる始末。しかし今回の異例の待遇と日本のメディアの脳天気な報道で「忠犬」ぶりを発揮しながら見返りが得られていない厳しい現実から国民の目をそらすことには成功したといえ、それがそもそもの首相の動機だったものと思われる。思えば在任期間中に必ず解決すると豪語していた北方領土問題や拉致問題も10年もやっていながらむしろ解決から遠ざかる一方で、北方領土での「共同経済活動」などただの取られ損。国費を使ったばらまき外遊の成果も見られない(国連安保理の常任理事国にでもなれていればまだ評価できるのだが...)。もはや自分には挽回不能とわかっていながら国民の無知と忘れっぽさを最大限に利用して「頑張ってる感」で覆い隠そうとしているようだが、経済・財政面でもインフレ目標や2020年のプライマリーバランス含めて公約はほとんど果たせておらず、しまいには人口減による求人倍率の上昇を自分の手柄にしてしまおうとする節操のなさで、これでよく3年しか政権の座になかった野党を批判できたものだと思う。