2012年3月3日土曜日

千年の都


「リニアがここを通らないのは国にとって100年、1000年の損失。」チェックインした京都のホテルでテレビをつけるとローカルニュースで市長のこうした発言が流れていた。さすがは京都。こんなことをいえる都市がほかにあるだろうか。

当地で訪問先の場所を確認しようとグーグルマップで調べてもなかなか出てこない。○○通りを上ルだの下ルだのいっているのも京都くらいのものだろう。関西出身の同僚に、どうして京都にだけ通常の住所表記と違うことが許されるのかと聞くと、「都だから」という一言が返ってきた。

かくいう私も大阪出張のときでさえ京都に滞在することがあるくらい好んで訪れる町ではある。東京にないものを多くもっていることは間違いない。町のそこかしこにある寺社もさることながら、和食・洋食を問わずレベルが高いのは美食家が多いからだろうか。町家を改装した店も実に雰囲気がいい。

くだんのテレビニュースによると、リニア中央新幹線を建設するJR東海は「奈良市付近を通すことで法律上の手続きを踏んでおり、京都駅が奈良市付近というのは無理がある。」としている。そりゃそうだろう。京都駅は明らかに奈良市付近ではないし、京都を通したら東名阪を最短距離で結ぶことにならない。また、リニアが通らないことでアクセス面での優位性は失われるかもしれないが、京都が寂れることはないだろう。

思えば奈良も都。京都よりも期間は短かったが古い。大都市京都に比べるといささか地味だが、私にとっては中学校の修学旅行で訪れた思い出の地だ。100年後も変わらない(それほど発展余地が感じられない)安心感があったが、リニアが通ると状況は変わるのだろうか。ただ、大阪まで開業するのは2045年というから私には関係のない話かもしれない。

(写真は宇治の平等院)