2017年12月10日日曜日

異次元の金融緩和

「国債が値下がりしたら地銀(地方銀行)は皆アウトですよ。」ゴルフ帰りにメガバンクのOBがいった。日銀の金融緩和策で貸すあてのない資金を国債の購入につぎ込む羽目となった地銀は、保有する国債の価値が目減りすると自己資本比率が基準を割り込む事態になりかねない。これにゼロ金利政策による利ざや(本業の儲け)の喪失が追い打ちをかける。いわれてみれば、付き合いのあった地銀の行員が最近相次いで転職したり事業を立ち上げたりしている。いずれも将来を嘱望され、M&A等のエリート部署に配属されていたような人たちばかりだ。地元に残りたいから地銀に就職しているはずなのに、東京の会社に転職する人さえいるので、よほど銀行の先行きに不安を感じていたのかもしれない。国債が何かのきっかけで暴落でもしたら、多くの地銀が一挙に破たんする可能性もあり、地方の経済は大混乱、事態収拾のために必要な大量の資金は国民が負担することになる。「異次元の金融緩和」などとはしゃいでいる日銀総裁や、人口の自然減による雇用状況の改善すら何ちゃらノミクスの成果と主張する首相はいったいどう責任を取るのだろうか。もっとも彼らのことなので、そのような事態に至るのは自らの任期を終わった後という読みがあるか、あるいは「コントロール外の要因」のせいにするつもりかもしれない。オリンピック後に予見される我が国の緩やかな衰退が、彼らの金融政策の失敗で急激な「落ちぶれ」に変わらないことを祈るばかりだ。