2017年10月28日土曜日

慢心

先の総選挙の結果は日本人の国民性を理解していることの大切さをよく表していたと思う。「今なら勝てるから」という本音が見え見えで、任期満了までまだ1年以上あるのに「国難突破」などどわけのわからない理由をつけて国会の冒頭に解散してもそのまま許されてしまい、一方で「排除」だの「さらさらない」など、多くの日本人が「あなたいったい何様?」と思う言葉を使った側が案の定大敗した。世論が移ろいやすいこともわかっていなかったのだろう。島国日本の国民は概して「国際派」が好きではないのでやたら横文字を使うのもプラスには働かない。日本人が大好きなのは「安心」「安全」といった言葉で、ありもしない(あるいは現実にはどうすることもできない)危機をことさら煽って票を稼ぐのはあるべき手法ではないが、しっかりと効果をあげてしまう。また、インフレ目標の未達など、都合の悪いことは説明を避け、いいことは自分の手柄、悪いことは野党のせいといった手法も本来日本人の美意識に反するものだが、「言った者勝ち」で躊躇せずやる側が得をしてしまう。財政的な裏付けもなく子育て支援を唱えるポピュリストぶりも無責任なことではあるが、自分の子どもの世代にかかる負担まで考えずに賛同する母親が多いことも計算済みのことだろう。圧勝といいながら全体の3割しか得票していない与党がさっそく「(民意を表す得票率ではなく)議席数に応じた質問時間の配分」などといい出しており、行政への監視もますます弱まりそうだ。自らの野心のために野党を大敗させた都知事の責任は果てしなく重い。