2016年1月10日日曜日

アベノミクス

某週刊誌に大前研一氏がアベノミクスについて語る記事が掲載されていた。アベノミクスなるものがいかに的外れで、崩壊不可避かという内容だった。私自身かねてから国内市場が縮小する中で金融緩和を行っても積極的に借入を行う企業などあるのだろうか、企業が政権の意向通り賃上げを行ったとしても、これほど物価が上がり、将来に不安がある中で消費が喚起されるだろうかといった、アベノミクスのロジックに対する漠たる疑問は持っていたが、記事はこうした疑問を確信に変えるもので、景気回復どころか、いよいよ日本の衰退も加速するのかと思った。特に共感したのは日本が低欲望社会になっている、つまりお金を稼いで贅沢をするという発想のない人が多くなっている現実を理解していないという点で、思えばバブルから30年近く経とうとしているので、消費の主役も代替わりしているのだ。また、インフレ目標を達成できなかった上に今度は非現実的なGDP目標まで持ち出して、達成不可能とわかっている財務省の役人たちがGDPの計測方法を変えようとしているとも書かれていたが、これが事実なら世も末だ。大前氏の指摘を考えると、中間層を増やすという民主党の政策の方がまだ消費を喚起する可能性があるような気がしてくる。日本の大企業が最近ますます海外の企業の買収を進めているのは成長性の高い海外の市場で足場を築くためとばかり思っていたが、大前氏によると、暴落する恐れがある円資産を海外の資産に変えようとする意図もあるそうだ。ということは大企業の経営陣も早晩アベノミクスが崩壊することを予想しているのだろうか。そうなると連立を組む公明党が消費税の軽減税率のことで政権離脱も厭わないなどと、それまでは考えられなかった強気なことを言い出したのも、経済政策の失敗を見越して首相と距離を置きたいとの思いがあるのではないかと疑ってしまう。(ちなみに大前氏は軽減税率は逆進性が高く、高所得者層により大きなメリットをもたらすと指摘している)「異次元の金融緩和」などと威勢が良かった日銀総裁が、「規制緩和が甘い」などと政権に責任転嫁を始めたときにはいよいよアベノミクスの先が見えたと判断していいかもしれない。