2011年10月9日日曜日

盛者必衰

先日お招きを受けて参加した昼食会であの寺島実郎先生の講演を聞き、アメリカが抱える問題の根深さを改めて認識するとともに、この半年間に私自身の身の回りで起きたことを思い起こした。

中国やインドのようにもともと大国であった国々が再び台頭し、アメリカの相対的な力が弱まっていくのは時間の問題とは思っていたが、イラク戦争以降、それが加速度をつけて進行しているようだ。寺島先生によるとイラク戦争の戦費は現在価格でベトナム戦争のそれを大きく上回る1.2兆ドルに達し、アフガンを含む戦闘での米軍兵士の死者も戦争の発端となった9・11同時多発テロの犠牲者をはるかに上回る6,000人を超えたという。空港で厄介な荷物検査をやられる度に「あのブッシュのせいで…。」と思っていたが、不毛な戦争でアメリカ国民が負った犠牲は計り知れない。

今年に入ってからクライアントであったアメリカの州政府の予算がカットになり、財政状況の悪化が比較的裕福であるはずの州にまで及んでいることを認識させられたが、最近アメリカへの出張から帰国した50歳代後半の知人は長年アメリカに通っているが、あれほどひどい状況は見たことがないといった。また、東南アジアでコンサルティング会社を経営している知り合いのアメリカ人は母校のプリンストン大学(超名門)で講演をするとたちまちアジアで働きたいという学生たちから履歴書が送られて来るといい、英語のオンライン学習を提供しているアメリカの若い女性企業家は高学歴でも職に就けない人が大勢いるので英語の先生はいくらでも調達できるという。そして母校のアメリカのビジネススクールからは米国経済再生の提言を行う参考にするとして、アメリカのビジネス環境やその競争力に関するアンケート調査が送られてきた。

アメリカの状況が時間をかけて少しずつ改善することはあるかもしれないが、冷戦終結後に唯一の超大国といわれた時代に戻ることはなさそうだ。また、弱者救済を社会主義的として頭から否定する国民性からして貧富の格差が是正されることもないのだろう。アメリカが何をやっても許される時代が終わることは好ましいことのようにも思うが、子ども時代から通算6年半を過ごした国が混乱し、力を失っていく姿を目の当たりにするのは一抹の寂しさもある。