2010年8月21日土曜日

羽田の再国際化

羽田空港の再国際化のニュースは感慨深いものがあった。幼い頃ロサンゼルスに赴任する父を見送ったのも、その後を追って母と兄と日本を発ったのも羽田からだった。当時まだ4歳になるかならないかの年齢だったが、雨天の中、展望台から飛行機を眺めたことや、空港でもらった花束を機内でスチュワーデスに捨てられたこと(検疫上の理由からだろうがそんなこともわからない年齢だったのでかなりショックだった)、当時はロスまで直行便がなかったため、ストップオーバーしたホノルルで日系人が経営するおにぎり屋に行ったことなどが断片的に思い出される。

ただ私が羽田の再国際化を歓迎するのはそうしたノスタルジックな理由からではない。日本の航空行政の失敗を取り戻すにはそれしかないと思うからだ。成田からの直行便がない中東などに行くときに大韓航空を利用してソウルのインチョン空港で乗り継いで行くと非常に便利で、機内に多くの日本人を見かける。東京に住んでいてさえそう感じるのだから地方に住んでいて羽田から成田まで移動してさらに海外のほかの都市で乗り継ぐことを考えるとインチョンに直接飛んで乗り継ぐ方を選ぶのはごく当たり前のことだ。乗客の利便性も考えずに国際線の成田と国内線の羽田とにすみ分けしたことは日本の航空会社にとっても競合上の不利益を生んだことは間違いないだろう。

ソウルもインチョンと旧国際空港であるギンポとの間で国際線と国内線のすみ分けをしているが、成田と羽田と決定的に違うのは市内から同じ方角にあってお互いのアクセスがいいことだ。成田という場所に空港をつくってしまったのもいかがなものかと思うが、乗客の利便性も考えずに成田に国際線を独占させたこともそれに輪をかけて理解に苦しむ判断だ。あれだけアクセスの悪いところに空港をつくってしまったのであればロンドンのガトウィックと同様に国内線、国際線両用にしていれば少なくとも地方の旅客の利便性は確保され、インチョンの後塵を拝することもなかったかもしれない。羽田の再国際化がこうした過去の誤った判断を正していく第一歩となることに期待したい。

先月、海外出張のために成田のカウンターでチェックインをすると搭乗券と一緒に空港施設使用料の値上げを通知する紙切れを渡された。テロ対策で費用がかさんでいるというのがその理由だったが、出張から帰国するとテレビで成田空港のCMが流れているではないか…。空港施設使用料を値上げしなければならないくらいお金が足りないならなぜ意味のないテレビCMなど流すのか。CMを見て羽田ではなく成田を利用しようと思う人がいるとでも思っているのだろうか。こうした経営感覚も国際線を独占してきたことの弊害だとすれば羽田との競争にさらされることで改められることに期待したい。