2010年3月6日土曜日

第二の人生


御殿山のアメリカンクラブで行われたワインのテイスティングイベント。仕事上のお付き合いで行っただけなのだが、せっかくなので業者でもないのにバンバンと試飲させてもらった。

ワインのテイスティングでは数多くの銘柄を試すためにワイングラスにごく少量注がれたワインを味わった後、紙コップや会場に置かれた容器に吐き出して次に行くのだが、私はせっかくのおいしいワインがもったいなく思えるのと、人前で吐き出すことへの抵抗感からついつい飲み込んでしまう。また、せっかく来たのだからなるべく多くの銘柄を試したいという欲張り根性を出して次から次へと試飲をしてしまう。今回はテイスティングの後にアメリカンクラブからも近い懐かしの大崎にあるアイリッシュパブで電機メーカー時代の友人たちと会うことになっていたのだが、会場を出るころにはすっかり千鳥足状態で、パブではひたすらコーラとジュースを飲み続けた。

今回のテイスティング会場で3つの銘柄を上代2000円という値ごろ感のある価格でそろえている業者があり、そのスタンドには私と同じくらいの年齢と思しきブロンドのおじさんが立っていた。聞けば外資系証券会社のJPモルガンの債券(fixed income)部門をリタイヤし、アメリカのワインを輸入しているのだという。取引しているカリフォルニアのワインメーカーは自らぶどう畑をもたず、複数の農園から適宜必要な量を買い入れて醸造しているとのこと。銀座のワインバー経営者に同じ農園のブドウでも斜面上の木の位置など、微妙な違いで実の品質が大きく異なってくるといったウンチクを聞いたことがあるが、このおじさんは醸造技術の方がよほど重要で、よそから買ったブドウでも十分おいしいワインができるといった。試飲してみると確かに価格のわりに美味で飲みやすかった。

アメリカのワイン産地ではシリコンバレーあたりで成功して若くして財を成した人々が農園を買い取って究極のワインづくりを目指したりしているという。第二の人生というと日本では定年後を意味することが多いが、終身雇用が当たり前でないアメリカでは会社で勤めあげて…といった発想はないようだ。それだけに若くして次のチャレンジができるわけで、それはそれでうらやましい身分だ。「竹内さんは定年がないからいいですね。」といわれるが、決まった年齢で組織を追い出されることがないだけで、顧客がいなくなれば否応なくリタイヤせざるを得ない。外国のお客さんばかり相手にしていると、日本の大企業のように長く仕事を続けられるかわかったものではない。