2010年2月6日土曜日

リコール

トヨタのリコール問題のニュースに触れ、つくづく車は失敗が許されない製品と思った。ソニーに勤めていた頃、同社の製品は壊れやすいといわれ、保証期間が切れる1年後に故障するように“ソニータイマー”なるものが仕掛けられているのではないかなどとさんざん揶揄されたものだが、テレビが映らなくなろうがウォークマンで音楽が再生できなくなろうが人命には関わらない。何年か前にソニー製のPC用リチウムイオン電池が発火する恐れがあるとのことでリコールされ、同社に大きな経済的損失をもたらしたが、犠牲者が出たとは聞かない。

投資銀行時代に大阪の大手電機メーカー系列の電池会社の幹部と面談したとき、自動車用の電池は怖くて手が出しづらいといわれた。確かに同じリチウムイオン電池でも不具合を起こしたときの結果がPCとは比べものにならない。ひとたび人命に関わる事故が起きてリコールとなれば、それまでコツコツと積み上げて来た儲けが一挙に吹き飛んでしまい、資本力のない会社であれば会社が傾きかねない。

しかし今回のようなことが“ゴーン改革”で系列の部品会社を整理した日産ではなくトヨタに起きたというのは意外だった。昨年ヨーロッパに自動車エンジン用のダイカスト成型工場をもつ会社さんを訪ねたときに、現地に工場をもつトヨタ向けのビジネスはやらないのかと尋ねたところ、やりたいけどトヨタは自前主義で外の会社にやらせないのだといわれた。車の性能の決め手となるエンジン部品は外に出さない一方で、ユーザーの安全に直に関わるアクセルペダルはグループ外から買っていたのだろうか。

昨年アメリカのPGAウェストで一緒にラウンドしたカナダ人が、父親が齢70歳にしてはじめて日本車を買ったと語った。何でも常にその時々でいちばん性能のいい車を買っていたが、今回はトヨタ車にしたというのだ。その後注意して見てみると、当地の道路を走っている車の多くがトヨタ車であることに気づいた。このような状況では長年にわたって市場シェアのトップを占めていたGMが倒産に追い込まれたのも無理からぬことか。

私がカリフォルニアの高校に留学していた1980年代にはトヨタといえばピックアップトラックのイメージで、国産車至上主義の人がまだまだ多かったこともあり、道行く車も日本車ばかりが目立つということはなかった。これほど日本車の地位が向上したのは喜ばしいことだが、それだけに今回の一件がどのような影響をもたらすのか気になる。