2009年2月1日日曜日

続・がんの話

3つの病院で腹部の腫瘍を早く切除するようにいわれた後、ビジネススクール時代に夏休みを過ごしたハワイ島のコナに行った。(クラスメートは誰も信じてくれなかったが、ハワイ島で夏休みを過ごしたのは遊び目的ではなく当地にある不動産投資会社でいわゆる“サマージョブ”をするためで、毎日カイルア・コナの浜辺近くの事務所でパソコンに向かって商業用不動産の収益予測をつくっていた。ハワイの会社を選んだ動機はと聞かれるとちょっと答えづらいが…。)当時は日本人観光客をほとんど見かけなかったが、その後日本航空の直行便が就航し、私が乗った便にはその年にペナントレースを制した西武ライオンズの選手とその家族が優勝記念旅行に行くために乗っていた。

到着した日の夜、かのカメハメハ大王が晩年を過ごした地に立つ老舗ホテルで床についたがなかなか寝つけず、ほかにやることもないので部屋にある大型テレビをつけた。日本であればどのチャンネルでもテレビショッピングをやっている時間帯であるが、たまたまつけたチャンネルで最近本を出版したらしき人をインタビューしている番組(おそらく有料広告番組)が放映されていた。聞くとその作家はがんというのは不治の病ではなく、ヒトの体の状態がつくり出すものだと語っていた。鍼の先生にその部分を切っても根本的な問題解決にはならないといわれながらもやはり切らないことへの不安が拭い難く、この作家の話に聞き入った。そして彼が書いた本の題名をメモして読んでみることにした。

日本に帰国してしばらく経ってから本が手元に届いた。読むと書き出しは医薬品業界批判オンパレードで、おそらく大多数の人はこれを読んだ時点でうんざりしてしまうだろうと思った。製薬業界は病気が完治してしまうとそこで収益が途絶えてしまうので、症状を抑える薬はつくっても完治させる薬はつくらない。株主から収益をあげる役割を任されている経営陣としては当然の行動である、といった具合だ。株主云々の話は別として鍼の先生も同じようなことをいっていたが、西洋医学を信奉する今の風潮からするとなかなか受け入れられないのではないかと思った。肝心なことはその後に書かれているのだが、多くの読者はそこに行き着くまでに“うさん臭い”と感じて読むのをやめてしまうだろう。

さて肝心のがんに関する記述だが、この人物曰く、がん(cancer)というのはもともと弱アルカリ性であるべき人体が生活習慣の問題なので酸性に傾くと発生する。そして酸性に傾いた体を弱アルカリ性に戻せばがん細胞は自然と正常な細胞に置き換わるという。こんな話を聞かされたら大多数の人は何を奇想天外なと思うだろうが、鍼の先生から代謝だの正常な細胞への置き換えだのといった話を聞いていた私には何となくありうることのように感じられた。

鍼の先生がいう腸の蠕動運動を起こすジョギングやウォーキングなどの運動は体をアルカリ性に戻すのに役立つだろうが、この本を読んでからというもの、さらに食生活をアルカリ性に変えるためにあまり好きでなかった梅干しを食べるようになった。それもこだわって紀州産南高梅の無添加・無農薬のものを取り寄せている。その後転移や増殖の気配もないまま(検査に行っていないので腫瘍がどのようになっているかわからない)歳月が流れるに従って病院の先生方がいっていたことがどんどんと説得力を失い、鍼灸師やこの作家がいっていることがますます説得力をもって感じられるようになった。