2013年6月22日土曜日

ワールドWave

NHKの「ワールドWave」なる番組で仕事上よく知る北アイルランドが取り上げられることになり、見てみた。NHKの番組表に「今も暴力犯罪が多発する」と書いてあった時点でイヤな予感がしていたが、案の定、15年前に終結した紛争が今も続いているかのような不正確な報道内容にがっかりした。北アイルランドは先進国の中で日本に次ぐ犯罪の発生率の低さで、暴力犯罪もイギリスの中でもっとも少ない。また、番組では紛争時代の遺産である、市内数か所に残る高い壁を映し出して、まだ暴力抑止の役割を果たしているかのようなことをいっていたが、実際に当地を訪れたことがある人であれば、そうした壁も今やダブルデッカー(2階建てバス)の観光コースになっていることを知っているはずだ。奇しくもこの番組が放送された数日後に、イギリスのキャメロン首相と北アイルランドのロビンソン首席大臣がこうした壁を順次撤去していくことで合意したと報じられ、NHKの報道のいい加減さが露呈した。私が知る北アイルランドの政府関係者がこの番組の取材を受けたが、当地が今やイギリスの中でももっとも外資の誘致に成功しているとか、日系企業の雇用数だけでも3千人にのぼるといったポジティブな情報は一切カットされていた。ネガティブなストーリーに仕立て上げた方が報道番組として関心を引くという計算が働いたのか、それともろくな取材もせずにいい加減な思い込みに至ってしまったのか、どちらにしても報道機関としてあるまじきこと。今回は私が身をもってわかっている内容だったからその不正確さに気づいたものの、一事が万事、このようなクオリティの取材・報道内容だとすれば、NHKの報道番組自体を信頼を置いて見ることができない。