2012年2月18日土曜日

機窓の風景


鹿児島出張から帰る飛行機が駿河湾の沖合あたりにさしかかったとき、窓側の座席に座っていたおばあさんがトントンと私の肩を叩き、「あれは富士山ですか?」と聞いてきた。窓の外を見ると、富士山が日の光に照らされて美しく輝いていた。「そうですよ。」と答えると、おばあさんは一言も発することなく見えなくなるまで富士山を眺め続けていた。

東京で富士山を見ながら育った私でも、飛行機から眺める姿は格別と感じる。このおばあさんは九州の方のようだったので、富士山を見るのすら初めてだったのかもしれない。東京で乗ったタクシーの運転手さんが今や羽田に到着してタクシーで富士山を見に行く中国からの観光客がいいお客さんだといっていたが、国内最高峰という以上の魅力をもっているのだろう。

しかし富士山の見え方というのはアングルによって異なる。羽田から関西方面や福岡に向かう便は火口が見えるくらい近くを通るので、迫力はあるがあまり美しいとは感じられない。一方、鹿児島あたりから羽田に向かう便はずっと沖合を通るので、北斎の浮世絵のように駿河湾を前景とした景色が見られる。また、富士山の南側を通るので、天気のいい日は日の光に輝いて実に美しい。

機窓から眺める景色でもう一つお勧めなのが関西空港から東京に向かう夜の便だ。空港まで送ってくれた大阪の友人が「夜景を見に生駒山まで連れて行く時間がなく残念」といっていたが、おそらくその比ではないだろう。離陸後左方向に旋回する機内からは大阪湾岸の夜景が神戸方面まで一望できるのだ。たまたま左の窓側の席を選んだのだが、とても得をした気分になった。

同じ料金を払うのであればいい景色が見られるに越したことはない。一度の出張でなるべく多くの面談をこなそうという発想になりがちな私は、間際まで飛行機の予約をしないことも多く、窓側の席がとれないことも多いが、飛行ルートを頭に浮かべつつ、なるべくいい景色が見られる側の席をとるように心がけている。

(写真は冬の羽田空港の日の出。これもまた格別の美しさ)