2010年9月11日土曜日

チリ

チリで起きた鉱山の落盤事故のニュースを聞き、これがほかの南米の国で起きていたら果たして工夫たちは生き残ることができただろうかと思った。地中深くにきちんと退避所が設けられていることはもちろん、リーダーの指示のもと、わずかな食糧を計画的に分け合いながら食べていたというから大変な統率の取れ方だ。ほかの南米の国ではこうはいかないのではないかと思う。

初めての南米旅行でアンデス山脈を越えてチリからアルゼンチンに入国したとき、アルゼンチン側の入国管理官がたばこ片手にいかにもやる気なさげにポンポンとスタンプを押してフリーパスさせていたのに対し、アルゼンチンからチリに入ろうとするトラックが反対車線に長い列をなしていたのを目にした。チリ産のワインが日本に出回るようになって久しいが、チリは一次産品の一大輸出国なので検疫には特に力を入れているのか、はたまた密輸対策なのか。一方のアルゼンチンは検査の厳しいチリから悪いものは入ってこないと思って手を抜いているのか、それともただテキトーなだけなのか。

ちなみにアルゼンチンで飲んだワインは私がこれまでに飲んだチリ産のワインよりもよほど美味しかったが、いいワインは全部自分たちで消費してしまうため輸出にはまわらないのだと聞かされた。こうした国民性の違いからか、アルゼンチンの人々の中にはブラジルやウルグアイといったほかの隣国に親しみをもつ一方でチリ人の悪口ばかりいう人たちがいる。これほど統率がとれて経済的にも成功しているチリに対するやっかみもあるのかもしれない。

このときの旅行ではロサンゼルスからサンチアゴ、サンチアゴからイースター島往復、そしてブエノスアイレスから再びサンチアゴ経由でロサンゼルスまでチリのラン航空を利用したが、客室乗務員がてきぱきと、おそらくマニュアル通りに仕事をこなしている姿を見て感心した。決して愛想がいいわけではないが、とにかく配膳も片付けも飲み物のサービスも一斉にしかも効率的にこなす。こうした南米らしからぬ?効率性の追求が業績にも反映しているのか、ラン航空はペルーのフラッグキャリアも傘下に収めて南米では一人勝ち状態。最近ブラジル最大の航空会社TAMとの合併を発表した。

日本で質の高いサービスに慣れてしまっている我々にとってラン航空のサービスはこの上なくありがたいが、大らかな南米というイメージとはほど遠い。なぜチリだけがこうなのか。アメリカの取引先にサンチアゴの大学に留学していたという人がいたので聞いてみるとこんな分析をしていた。チリは南米の国々の中でもドイツ系移民の比率が高いのでもともとドイツ人の国民性が色濃く反映している。加えて長年独裁政権のもとにあったので国民が規律正しくトップダウンの指示に従うことに慣らされている、とのこと。なかなか興味深い。