2010年6月20日日曜日

名古屋飯


地元出身者でも見どころはないと断言する名古屋なのでたまに行ったときにも観光はせずに地元の料理を食べて帰るようにしている。名古屋グルメといってすぐに思いつくのは味噌カツと味噌煮込みうどんだが、東京で育った私には前者はどうしても理解できない。トンカツによく合うウスターソースなるものがあるのになぜあえて味噌をかけるのか。このあたりは八丁味噌を食べて育った地元の人たちにしかわからないのかもしれない。

ということで今回も味噌煮込みうどんを食べることにしたが、飛騨牛のこともあったので以前二度ほど行った有名店ではなく、地元の人に支持されている店を探すことにした。この有名店は名駅に隣接した地下街という便利な立地もあって外来の客の定番となっているが、ほかの店に比べて特においしいわけでもないのに値段だけはやたらと高い。名古屋コーチン入り味噌煮込みうどんが2300円などというのはもはやうどんの値段ではない。店の内装は洒落ていて汁が衣服につかないように紙の前掛けがついてくるのも気が利いているが、それにしても高すぎる。

パソコンで色々なキーワードで検索していくうちに、何とこの有名店と同じ地下街で、しかもすぐ裏手にあるうどん屋が地元で人気と知った。さっそく行ってみると店頭に置かれたメニューの中に味噌煮込みうどんがあったが、それが目当ての観光客に来てもらいたくないからか、あるいは近隣の有名店に気を使ってか、数ある品目の一つという扱いで、注意しなければ見落としてしまいそうだった。中に入ると夕方の時間帯だけあって広々とした店内は仕事帰りのサラリーマンで賑わっていた。まわりを見回すと一品料理をつまみに酒を飲んでいる人ばかりで、こんな居酒屋のような店で本当においしい味噌煮込みうどんが食べられるのだろうかと思った。

注文してからしばらくして運ばれて来た味噌煮込みうどんは一見何の変哲もないものだったが、スープはもとより絶妙のゆで加減の麺が歯ごたえがあって実においしかった。これで900円というからやはり地元の人の目は確かだ。特定の店が実力以上の評価を受けて質と価格にギャップが生まれてしまうのは“有名店”だの“専門店”だのといったことばに惑わされる人が多いからだろう。旅先でおいしいものにありつくには味と値ごろ感を知る地元の人たちが行く店を探し出すに限る。