2009年11月14日土曜日

アキバ


エジプトの取引先からの突然のメール。知人が来日しているので会ってみてはどうかとのこと。さっそくその知人という人から事務所に連絡があり、週末に会う約束をした。取引先の知人という以上の情報がなく、よく素性がわからぬまま会う約束をしたのだが、滞在中の予定について話す中で駐日エジプト大使が同行するミーティングだの、カイロ大学に留学していた元防衛大臣(環境大臣)との会食だの、元駐エジプト日本大使との会食だのといったことを聞かされてこの人はいったい何者だろうと思った。

土曜日の昼前に赤坂のニューオータニホテルのロビーで待ち合わせて銀座の煉瓦ビルにあるレストランに連れて行った。この店にはエジプトの取引先が作っているオリーブオイル(といってもそのへんで売っているものとは違うオリーブ果汁そのもの)を納めているので、それを味わってもらう意図もあった。そして話をする中で、氏がエジプトの元首相のご子息であることを知った。また、もともとエンジニアであった氏が若い頃、私が勤めていた電機メーカーの旧本社に研修で来ていたという偶然にも驚いた。氏は50歳代と思しき年齢なので、おそらく私が入社する前の話であろう。

食事の後、氏がお土産を買いに秋葉原に行きたいというので付き合うことになった。思えば秋葉原に行くのは久しぶりだ。外国人観光客の定番スポットになっていると聞いてはいたが、実際に行ってみると“免税(duty free)”を謳った外国人観光客向けの店が目立って驚いた。しかも店内には家電製品だけでなく、日本のお土産として人気のありそうなお土産(といっても価格の安い衣類や置物などでMade in Chinaと書かれていたりする)が所狭しと並んでいる。アキバもしばらく来ないうちにずいぶんと様変わりしたものだ。

秋葉原にはラオックスに限らず中国人経営の店が増えているそうで、氏が携帯電話で呼び出したエジプト政府観光局の駐在員の話では我々がいた店も実は中国人経営とのこと。接客にあたっているのはさまざまな言葉を操る若い外国人店員で、商品知識もまずまずでセールストークも要領を得ている。氏の接客にあったったのは流暢な日本語と英語を話すリーという名字の青年で、中国の朝鮮族だとすれば北京語もネイティブ並みに話すのだろう。かつてここで商売をしていた小規模店主にはなかなかこうした店の経営まではできないため、秋葉原が外国人の観光名所に変貌していく中で店を手放したのだろうかなどと想像した。

免税という言葉に弱いのは日本人ばかりではないようで、こうした看板を掲げる店は外国人観光客と思しき人々で賑わっていた。観光客の誘致に励む政府の施策だとすれば十分効を奏しているようだ。しかし国際空港ではなく東京の町なかで免税というのはいったいどういう仕組みなのだろう?見ると観光客がパスポートを提示し、店側が購入した商品を記した書類をホチキスでパスポートのページに留めていく。出国の際にこの書類を外されるのだそうだが、それで海外に持ち出すことを確認できるのだろうか。リー氏に聞いてみると預入れ荷物に入れてしまったといえば誰も確認できないとのこと。つまりは日本人が外国人観光客にお金を渡して電気製品を買ってもらえば消費税分が安くなるということ。消費税が5%の間はたいした金額にはならないかもしれないが、10%にでもなればこうした違法行為が横行しかねない。若干脇が甘くも見える観光客誘致策だが、おそらくそうしたことも想定しながら踏み切ったのだろう。

エジプトからの思わぬ来客のおかげで久しぶりに行く機会を得たが、オタクでもなければアキバ系ともほど遠い私にとって秋葉原は基本的に用事のないところ。噂には聞いていたが、これほど観光地化されているとは思わなかった。銀座や浅草からも近いので、外国からの来客を手軽に連れて行かれる場所としてメニューに入れることにした。