2009年1月17日土曜日

定額給付金とガザ攻撃

最近すっかり政治離れをしている私は、見ていてあまり明るい気持ちにならない政治家の討論番組は極力避けるようにしているが、先日テレビをつけっぱなしにしていたら各政党の代表が景気対策について論じる番組がはじまった。世論の支持がない定額給付金に関してどう見ても旗色が悪い与党がどのように説明するのだろうと思ってみていたのだが、元宝ジェンヌの公明党の女性議員が議論を打ち切らんとばかりに「給付金はやらせていただきます!」ときっぱりと発言するのを聞いていったいこの国の政治はどうなってしまっているのだろうかと思った。

“キャスティングボート”という言葉があるように、議会で安定多数を占める政党がないときには少数政党が議席数以上の力を持つことはありうるが、彼女の発言は国民のごく一部の支持しか得ていない政党の人間がいう台詞ではない。こうした物言いは小選挙区制のもと、公明党がもつ固定票に頼らなければ当選がままならない議員を多く抱える自民党との力関係をよく表している。公明党が世論の支持がない政策を強引に推し進めようとしているのは自分たちの支持者と約束したことだからという理由のようだが、国民全体ではなく自らの支持者にしか目がいっていないような政党がこの国の政治を動かしているとしたら健全な状況とはいえまい。

一方、年末から年始にかけての国際ニュースのヘッドラインはイスラエル軍によるガザ攻撃だった。過激派にロケット弾を打ち込まれたからといって無差別に反撃を行い、何百人もの民間人を殺害するのは虐殺以外の何ものでもあるまい。かつて大量殺戮の犠牲となった民族が今度はほかの民族に対して同じことをやっているのだからどうしようもない。イスラエルがこのようなでたらめを行えるのは国内世論の支持があることと、超大国アメリカの無条件の支持が得られるとの自信があるからにほかなるまい。そして民主主義、人道主義を口にし、自らが国際社会の代弁者であるかのように発言する当のアメリカもイスラエルの期待にしっかり応え、その意のままに発言、行動する。まさにダブル・スタンダード(二重基準)であり、アメリカ国民全体の利益とはほど遠い。

アメリカの人口のたかだか2%しかいない民族がその経済力を背景に政治に大きな影響を行使し、国民の血税を自らに都合がよいほうに振り向けさせるというのは今の日本で起きていることと似ているが、その影響の深刻さという点では桁違いだ。何せアメリカは世界(唯)一の超大国で、アメリカの政府を動かすことは全世界に影響がおよぶ。サブプライム問題で話題となったレバレッジにたとえれば100円の自己負担で100万円分のお金(そのほとんどが人様のもの)を動かすようなもので、そうした意味ではアメリカが提供する最新兵器による攻撃に晒されているアラブの人々だけでなく、そうしたからくりについて知らされることもなく税金を徴収され、自らがつくった敵との戦いに駆り出される多くのアメリカ国民も被害者といえるかもしれない。