2009年1月5日月曜日

紀伊勝浦

年齢とともに寒さが身にしみるようになっている今日この頃、年末の休みを利用して南紀の勝浦に 行くことにした。この地を訪れるのは二度目だが、太平洋の大海原から吹く暖かい風、水平線から昇る朝日、海を見下ろす岩場に湧く温泉、水揚げ量日本一を誇る近海産まぐろ・・何度来ても飽きそうにない。

ただここは東京からのアクセスがすこぶる悪い。新幹線で名古屋まで行き、そこからさらに3時間半特急に乗ってようやくたどり着く。新幹線よりもずっと短い距離をより長い時間をかけて行くことになるわけだが、紀勢線の車窓から見える海や山の景色には心を癒され、時間も忘れる。

帰省ラッシュのピークが過ぎた月曜日の早朝に家を出て昼過ぎに紀伊勝浦の駅に到着した。紀伊勝浦駅のホームに降り立つと暖かい南国の空気に包まれる。南紀白浜や鹿児島、八丈島の空港でも感じるこの感覚が何ともいえない。前回来たときに観光案内所の人に勧められた駅前の飲食店でマグロ定食を食して腹 ごしらえをした。

シャトルボートで沖合に浮かぶ島にある滞在先のホテルに行くために港に続く道を歩いていくと、店頭にみかんが山と積まれた店を発見した。以前来たときはまったく気づかなかったのは季節でなかったからだろう。値段を見ると何とキロあたり350円だった(安っ!)。試食すると東京であれば値のはる部類に 入る甘さだった。さすが紀州。さっそく10キロ入りを買って東京の実家に送った。

今回滞在したのは島全体がホテルになっている大きな施設だった。こうした大型のホテルはあまり好みではないが、朝日が望める絶好のロケーションでいくつもの温泉があると聞いて選んだ。実際に行ってみると評判に違わぬ大きさで、ホテルの中が一つの町であるかのようにいくつものお店やゲームセンター、マッサージ店やレストラン、カラオケボックスまであった。朝、敷地内にある山のてっぺんから眺める日の出もすばらしかった。

関東の人間は勝浦というと千葉県の勝浦を思い浮かべる。和歌山県にあるのはあくまで“紀伊勝浦”だ。しかし実際には和歌山県の勝浦が元祖で、房総の勝浦は紀州から移り住んだかつお漁の漁師たちが故郷の地名をつけたに過ぎない。千葉県の白浜ももとは南紀白浜から来ているという。電機メーカー時代に合弁 交渉の相手だった大手部品メーカーの和歌山出身の経理部長から聞いた話だ。

しかしホテルの部屋でテレビをつけると職も住む場所も失った人たちのニュースが流れ、悠長に避寒旅行などしている我が身を省みて一抹の罪悪感を感じる。もちろんそんな感傷は何の役にも立たないのだが。2009年は明るい年になってもらいたいものだ。