2012年1月21日土曜日

ソニー

「ソニーって大丈夫なんですか?」最近たまに聞かれるが、10年以上も前に辞めた私には正直わからない。何期も赤字を続けても持ちこたえていられるのだから規模が大きく事業が多角化していることは強いのだろうというくらいに思っていたが、ムーディーズが同社の長期社債の格付けをBaa1にまで下げた(しかもネガティブアウトルック)というニュースを聞き、いよいよ黄信号がともったのだろうかと思った。

テレビの討論番組で「電機業界は日本でもっとも競争力のない業種」と断じた経済評論家の言葉を聞き、私が何となく感じていたことが間違っていなかった気がした。自動車と並んで日本の代表的な産業といわれてきたが、デジタル化とキーコンポーネントの外製化によって商品の差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれやすくなった。コスト高の日本のメーカーは競合上不利で、利益の落ち込みによって投資に充てられるお金も減り、さらに不利な状況に陥るという悪循環が始まって久しいように感じる。

この評論家はまた、日本が競争力があるのはキーコンポーネントで、サムスンの携帯電話が売れれば売れるほど日本の韓国に対する黒字が増えるといった。確かに他社に真似できないコンポーネントを作っている企業は完成品メーカーとは比べものにならない高い利益率をあげている。

ただソニーの誰も今日のこの事態を想定していなかったかといえば決してそうではない。私が在籍していた1990年代には業容の転換を図らなければならないと唱える経営者がいたが、まわりがついて来なかった。当時の花形で、多くの経営幹部を輩出していたテレビ事業が今や赤字の源泉となっているのを見ると、過去の成功体験がいかに危険なものかを感じる。

ソニーに再生の道はあるのか?これも私にはわからない。ただ私が在籍していた当時検討されていた持ち株会社化は有効な施策と思う。これによって持ち株会社の経営陣はポートフォリオの管理や組み換え、事業間のシナジーの醸成や新規事業の立ち上げに集中することができ、持ち株会社にぶら下がる各事業会社は経営責任が明確になるとともに有効な経営評価尺度を与えられれば自律的に収益の改善に取り組むことができる。

では同社にそのような自助努力ができるのか?それはあまり楽観できない気がする。いかんせん何期も赤字を続けている経営者がそのまま残って毎年多額のボーナスを受け取っている上に、昔ながらの後継指名をしようとしているように見える。早々に株を売ったのは私にしては珍しくいい判断だったかもしれない。