2010年12月12日日曜日

仮名手本忠臣蔵


日本に遊びに来たアメリカ人の友人などに歌舞伎の話をされると日本人でありながら見たことがないというのはいいづらい。高校時代に学生向けの割引料金で見られるイベントなどがあったが、このようなこと?になるとは思わず、参加せずじまいだった。

いつかは見に行こうと思いながらなかなか実行せずにいたところ、ビジネススクールのOB会から歌舞伎鑑賞の案内が来た。資本主義の総本山のような学校のOB会でこのような文化的なイベントをやるのはどういう風の吹き回しだろうかと思ったが、その後同学のOBでキッコーマンの副会長などを務められた茂木賢三郎氏が独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長を務めておられ、特別なはからいをしてくださったことを知った。

いい席で観劇できて、しかもその後に文字通り舞台裏を見ることができるバックステージツアーまでついているとなればいうことはなく、一も二もなく申し込んだ。演目は歌舞伎初体験の私でもストーリーを知っている仮名手本忠臣蔵。主演は松本幸四郎と市川染五郎親子、女方は中村福助の顔ぶれ。知っている顔が出ていれば自ずと集客力も上がるだろうから、歌舞伎役者がテレビでの露出に努める理由がわかる。

実際に見てみると、なるほど役者の演技も衣装も音楽も演出も実にすばらしく、休憩をはさみながら5時間という長丁場を感じさせない。台詞を聞きながらストーリーをフォローしていくのはかなりきついが、解説が流れるイヤホンガイドがあればばっちりだ。しかも役者の台詞の邪魔にならない絶妙の語り口でストーリーだけでなく、それにまつわる裏話や史実についても話してくれるのがいい。

照明が電気になり、回り舞台の動力が人力から機械に変わるなどハードの部分が変わったとはいえ、江戸時代に演じられていた劇を21世紀に生きる我々が見ることができるのは何ともすばらしい。特に忠臣蔵などは実話にもとづいているためフィクションものよりよほど面白い。このような機会があればぜひまた参加したいと思った。