2009年9月6日日曜日

バランス感覚

衆議院議員選挙の投票日、まだ投票が行われている最中の昼の日中に知人から「民主党圧勝」のメールが来た。知り合いに投票所で立会いをしている人がいるとのことだったが、投票に訪れる人たちが誰に投票しているかはわからないはず。後で聞いた話では、投票用紙を二つ折りにせずに投票箱に入れる人が多くて立会人から丸見えなのだそうだ。案の定、民主党が大勝した。

政治学を専攻していた大学時代、選挙報道が有権者の投票行動に与える影響を研究テーマに選ぼうとした。有権者のバランス感覚が働いて事前報道で優勢と伝えられた政党から票が逃げるとする説と、逆に勝ち馬に乗ろうとする人が出てよけいに差がつくという説があるが、いずれも検証されておらず、個人的に興味をもっていたテーマだった。ゼミの教授も大いに賛成してくださったが、結局検証の方法で行き詰って断念した。

バランス感覚が働く人たちは確かにいるようだ。友人の一人は事前の予測で民主党が大勝すると報じられたので小選挙区では公明党の対立候補に入れようと思うといった。民主党に大勝させないために学会員でもないのに公明党に入れようとするというのにはいささか驚かされた。しかし今回の選挙はそうしたバランス感覚を働かせる一部の人たちの投票行動をも吹き飛ばしてしまうくらい強い意思をもって民主党に票を投じた人が多かったようだ。同僚はふだん投票所で見かけない風貌の人がおおぜい来ていたといい、別の知人は投票所に長い行列ができていたのでいったん家に戻って後で出直したという。かつて民主党の小沢氏が、国民が生活に不満をもったときに政権交代が起きるといっていたそうだが、今まさにそのような状況なのだろう。

私はバランス感覚を働かせようとする友人に対し、民主党が安定多数を確保した方が責任の所在がはっきりしていいではないかといった。選挙が終わってもその考えに変わりはないが、大敗を喫した自民党で小選挙区での辛勝または比例代表での復活当選でかろうじて残ったのがあまり先が長くなさそうな人たちばかりなのを見て、いよいよ始まったと思っていた二大政党制が早くも崩れ去ったとの印象を受けた。この上は民主党の政治が行き詰まったときにそれに代わりうる、利権絡みでない新たな政治勢力の台頭に期待したい。