2009年8月22日土曜日

インターン

私の会社では、多摩地区のある大学からの依頼で昨年から夏に2週間ほど学生をインターンとして受け入れている。この大学は電機メーカー時代の同僚が非常勤講師として教えており、学生の語学留学先としてシアトルの大学を紹介したことから外国語学部の先生方とご縁ができた。うちのような零細企業にこうした依頼が来るのは多摩地区に比較的近いロケーションであること、そして一応国際的なビジネスをしているのが外国語部学部の学生の働き先として好ましく思われたからと想像する。

インターンというのは学生と企業の双方にとって実にいい制度と思う。学生側にとっては大学の講義では学べない実社会での生活を一足先に味わうことができるし、進路を決めていれば希望の業種なり職種なりを試しに経験してみることができる。就職した後になって想像と違っていたとなると大変だが、インターンとして経験しておけばより確信をもってその方向に進むことができよう。私が大学在学中にこのような制度があれば、社会人になってから何の役に立つかもわからない講義を受けているよりはよほどためになったような気がする。

インターンの制度は企業側にとってもいい学生を卒業前に見つけておけるというメリットがある。ここでいう“いい学生”というのは仕事ができるという意味であって、偏差値が高い大学に通っているとか学力が高いという意味ではなく、両者は必ずしも一致しない。仕事ができるかどうかは実際にやらせてみなければわからないが、就職面接に来る学生の能力をその場で見きわめる方法はないので、企業は往々にして学歴などを判断基準にしてしまうのだろう。大学をあまり選別しすぎず、広く学生をインターンとして受け入れれば、その企業にとって必要な人材を見つけ、採用に結びつけることもできよう。

仕事の能力という点についていえば、たとえば顧客の前に立つ業務と裏方の業務とでは必要とされる能力も異なる。しかしどの会社でももっとも大きなウェイトを占めるのは地味な下調べやデータ作成、資料づくりなどの業務で、こうした業務を正確かつ迅速にこなせる人材が確保できれば経営の効率も高まる。こうした業務を行う能力は何も学歴や学力に比例して高いわけではないが、いわゆる一流大学出の学生ばかりを採用している企業ではそうした人たちがそのような業務にあたることになる。彼らにもっと適した業務があるとすれば、こうした人たちが一部の大企業に集中してしまうのは経済全体にとってマイナスだろう。

インターンの学生には当然ながらこうした地味な裏方の仕事しか任せることはできないのだが、今年私の会社に来たインターンの優秀さには驚かされた。同僚が1週間はかかると思って頼んだデータベースづくりを3日で終え、丸一日はかかると思ったウェブ検索や名簿のアップデイト、宛名ラベルづくりなども、ものの半日で終えてしまった。私が学生のときを思い起こすととても彼ほど仕事はできなかったように思う。

彼が通っている大学は多摩地区の中でもいわゆる偏差値が高い名の通った大学ではないが、多くの企業が必要としている業務の遂行能力の点で、彼はそうした大学の学生に比べて遜色がないどころかもっと上を行っているかもしれない。彼の大学の教務課が許せば引き続きアルバイトとして来てもらい、うちが新卒を採用できるような会社であれば採用を真剣に考えたいくらいだった。インターンを受け入れる企業がますます増えて彼のような才能を発掘するのに役立つことを願いたい。