2009年6月21日日曜日

株主総会

古巣の電機メーカーの株主総会。昨年同社の株を買ったので時間があれば行こうと思っていたが、結局忙しくて行かれなかった。

わざわざ株主総会に行こうと思ったのは株価のせいではない。今の倍以上の価格で買った人はともかく、私の場合は金融危機で株価が暴落した後に今の価格より4割以上安く買っているので株価に関しては文句をいう立場にない。むしろ経営陣に為替や景気の動向次第で赤字に転落してしまう今の体質を抜本的に変える施策があるのか探りたかったのだ。それがなければ長期的に株を保有し続けるのは躊躇される。

この数か月同社の株価が上がってきたのは市場全体が上がってきたからで同社固有の要因によるものではない。むしろ同社を取り巻く環境は他の業種にも増して厳しいように見受けられる。かつてコンスーマー・エレクトロニクス業界は実質的に日本のメーカーどうしの競争だったのが、今は圧倒的なコスト競争力をもつアジアのほかの国のメーカーと競争しなければならない。コストベースが全く異なる相手と同じ土俵で戦っているのだから、相手に合わせて価格を下げれば当然利益はあがらない。その結果、同じ価格帯で売っても利益があがる(あるいは赤字にならない)他国のメーカーに比べて将来に向けた投資を行う資金的余裕もなくなり、競合上さらに不利になる。そうなるとまさにじり貧だ。

こうした状況は今に始まったことではなく、円安や好景気で過去最高益を出した2年前も厳然と存在していた。過去最高益というのはあくまでその会社の過去との比較であり、しかも会社の規模も変わっているので利益の絶対額をもって単純に業績の良し悪しは語れない。本来は同じ時に同じ環境下で戦った国内外のコンペティターに比べて相対的にどうだったのかという視点が必要だろう。

今年の総会でも経営陣からじり貧のリスクを脱する根本的な解決策は聞かれなかったようだが、あえて触れなかったのかそれとも考えてもいないのかが気になった。ハードとソフトの融合だとかネットワーク事業だとかは方向性としては正しいのかもしれないが、社員の大半が旧来のエレクトロニクス事業に従事している中で、それだけで問題は解決するだろうか。

株主総会まで3週間となったある日、同社の本社に勤務していたときの同僚から突然退社の挨拶が来た。そこには「今のような不況下で会社を辞めるのはリスキーと思ったが、会社に残る方がもっとリスキーな気がする」と書かれていた。株主としては聞きたくないセリフだった。リチウムイオン電池の技術を足がかりにした自動車産業への参入など、株主にも本社の社員にも知らせていない大きな秘策がいくつもあることを願いたい。